「我々は、まず世界のゴルフ業界を研究しました。すると、格式の高いゴルフ場は世界中からエグゼクティブ層を集客しようとマーケティングしたり、ゴルフ場同士でパートナーシップを結んだりしていることを知りました。それを踏まえて、何ができるのか、何から始めるべきかを考えました」

――具体的に、どうすることにしたのですか。
「10年から取り組んでいる施策が、海外のゴルフ場との交流を目的とした『フレンドシップ契約』です。初めて契約したのは香港のディスカバリー・ベイ・ゴルフクラブです。現在はマレーシア、タイ、中国、ベトナム、米ハワイを加えた合計7つのゴルフ場と契約しています」
「異なる国のゴルフ場同士で、会員同士の交流を目的としたクラブマッチ(クラブ合同のコンペ)を開催したり、本来ビジターでは予約利用ができないクラブでも互いにメンバーを受け入れたりしています」
――最初から、ターゲットを絞って外国人のお客さんを集めればいいのではないですか。千歳空港から車で15分という好立地を生かせば可能なはずです。
「積極的に呼びかければ集客できるでしょう。しかし、日本の既存会員の皆さまの理解がないままに受け入れれば、必ずどこかで不満が出てきます。先ほどの話にもありましたが、どちらが良い・悪いの話ではなく、国が違えば文化や習慣が異なるからです」
「それなら、まずは会員同士の交流を促すことで、お互いに理解を深めていくほうが大事なのではないか。もっといえば、日本人が抱きがちな海外や外国人への苦手意識を取り払うお手伝いこそが最初にやるべきことではないかと思ったんです。それが実現すれば、プラスオンのマーケットであるインバウンド客からの恩恵が中長期的に得られるはずだということです」
マレーシア・タイとの3カ国合同も
――合同コンペのこれまでの実績を教えてください。
「これまでに日本で5回開き、合計177人の外国人と同86人の日本人が参加しました。外国人の内訳は香港が3回で109人、マレーシアが2回で46人、タイが1回で22人です。このうち1回は日本、マレーシア、タイの3クラブ合同で、17年8月に開きました。総勢71人が参加する大規模なもので、その日の午後はコースを貸し切りにしました」
――国内で合同コンペを開くだけでは、日本人会員にメリットが少ないのではないですか。
「当クラブは北海道にあるので、冬の間は基本的にコースに出られません。ですからプレーしたい場合、必然と南の暖かいほうへ目が向きます。その意味では、私たちがフレンドシップ契約を結んでいるゴルフ場は、どこも会員の皆さまのニーズがあるといえます。もちろん、我々も意図的にそういった(日本が冬の間でもプレーができる)ゴルフ場と契約してきました」
「合同コンペは海外でも16年に実施しました。ほかに年に1回ですが、我々の会員の皆さまだけの親睦ゴルフツアーも海外で実施しています。14年にマレーシアで最も格式の高いサウジャナ・ゴルフ・カントリークラブで開催したときは、食費や移動費、宿泊費を含めて20万円弱と、かなりギリギリの価格設定にしました。我々がフレンドシップ契約を会員サービスのひとつと位置づけていることが分かっていただけると思います」
(後編に続く)
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増え続ける外国人観光客が、日本各地に摩擦を生んでいます。でも、それを乗り越えた先には多様性という新たな地平が広がっています。2020年の五輪・パラリンピックはその絶好の機会になる可能性があります。NIKKEI STYLEオリパラは「開国インバウンド」と題して、先駆者たちのインタビューを随時掲載します。聞き手は、インバウンドのコンサルティング会社、やまとごころ(東京・新宿)の村山慶輔代表が務めます。
「ザ・ノースカントリーゴルフクラブ」総支配人、運営会社のセガサミーゴルフエンタテインメント社長も兼務。新卒で入社したパルコでサービス業に携わった後、約10年間の桂ゴルフ倶楽部での勤務を経て、現職に。日本ゴルフツーリズム推進協議会・理事、北海道ゴルフ観光協会・副会長なども務める。9月6日の北海道地震では停電はあったもののスタッフ、コースともに被害はなく、現在は通常通り営業している。「道外から多くの人を呼び込んで、復興につなげていきたい」という。
