名脇役ドラマ出演数ランキング 演劇出身が多いワケ
いま、お茶の間の視聴者に顔なじみのあるバイプレイヤーは誰なのだろうか。2017年の7月から18年6月までに放送された、(1)18時から23時台に放送開始の連続ドラマ、(2)NHK大河ドラマ、(3)NHK朝の連続テレビ小説(朝ドラ)を対象に、レギュラー・ゲストを問わず出演者を調査。出演本数を導き出した。
期間内の出演作が12本と最多だったのは、中野剛。『アンナチュラル』の捜査二課の刑事・小早川役、『半分、青い。』の「月刊リリー」の江口正樹編集長など多彩な役柄で活躍。彼の名前は知らなくても、顔を見れば「見たことがある」と感じる人も多いだろう。これに続くのが9本の小林隆。三谷幸喜主宰の劇団「東京サンシャインボーイズ」出身で、『古畑任三郎』の警察官・向島音吉役などで知られる。今年は『デイジー・ラック』にレギュラー出演し、『99.9-刑事専門弁護士- SEASON2』の最終回などに出演した。
100通りの芝居を考えて臨む
ランキングを見渡して多いのが、小林のような演劇出身俳優だ。出演作が8本で3位の高橋洋は、堺雅人を輩出した「東京オレンジ」の出身。同じく3位の升毅は「劇団MOTHER」の主宰だった。7本で9位の小松利昌は「劇団☆世界一周」、滝藤賢一は「無名塾」、渡辺いっけいと橋本じゅんは「劇団☆新感線」…と数え上げればキリがない。演劇は1~2カ月の稽古期間、1つの台本とじっくり向き合う。そのため「100通りの芝居を考えて臨む」というような周到なタイプが多い。その姿勢が、スピーディーに的確な芝居を撮る必要があるドラマ制作者たちの支持を集めているようだ。
出身別で見ると、3位のでんでんはお笑い芸人出身、同じく3位の春海四方は「一世風靡セピア」のパフォーマーだった。5本で26位に並んだ岡田浩暉や杉本哲太は歌手からの転向組。また9位の渋谷謙人や、17位の尾上寛之ら、子役出身も存在感を示す。
40~60代の中高年で8割
タイプ別では、「こういう役といえば、この人」とすぐに思い浮かぶような「個性派」と、どんな役にもなじんで作品を支える「職人型」に分けられるだろう。例えば3位に入った高橋努は、『S -最後の警官-』の巡査部長・梶尾竜一役や『シグナル』の元暴力団員ように、大柄の体を"個性"とした武骨な男の役が多い。26位に入った佐野史郎でいえば、『ずっとあなたが好きだった』の「冬彦さん」や、『限界団地』の元団地住人のように、狂気を秘めた不気味な男役は独擅場だ。そんな自分のイメージを逆手に取る形で大ブレイクしたのが、9位に入った遠藤憲一だ。もともとはコワモテのヤクザや刑事役が多かったが、近年は気が弱くコミカルな役柄も演じて、"ギャップ萌え"で人気を得た。
一方で、強烈なイメージがついていないことから、幅広い役に起用されやすいのが、1位の中野剛を筆頭とする「職人型」だ。このタイプで成功したのが9位の光石研。「監督のオーダーに応えるのが仕事」と公言し、暴力団幹部(『アウトレイジ 最終章』)から妻の尻に敷かれる中華料理店主(『ひよっこ』)まで演じて注目を集めた。
最後に、ランキングの「年齢」に注目してみた。全59人中、最も多いのは50代で21人。次に多いのが40代で16人。60代が11人、30代が7人。80代が2人、20代と10代は各1人となっている。
最も多いのは40~60代で、全体の約8割を占める。これには、企業ドラマの社員に家族ドラマの父親、刑事モノの刑事に医療モノの医師に患者など、需要の多さが影響していそうだ。今後、視聴者の高齢化で「大人のドラマ」が増えれば、中高年バイプレイヤーの活躍の場は、さらに広がるだろう。
(ライター 泊貴洋)
[日経エンタテインメント! 2018年8月号の記事を再構成]
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