「教育とは変化を起こすこと」 高校での悲劇胸に挑むLITALICO執行役員 深沢厚太氏(上)

「教壇に立つ資格があると思えない」

しかし、結果的に教師にはならなかった。大学卒業後は、マッキンゼー・アンド・カンパニーの経営コンサルタントという道を選択する。深沢氏は、当時の心の動きを次のように振り返る。

教育の魅力は相手にも自分にも変化を起こせることだと語る

「大学4年のとき、教育実習で初めて教壇に立ちました。ところが、単純に全く面白くなかった。決められた教科の内容をティーチングすることには関心が持てなかったんですね。教壇の上から数十人の生徒を見下ろしたとき、自分がそこに立つ資格があるとも思えなかった。20代もそこそこ、人生経験も乏しい僕が、彼ら一人ひとりと向き合うことはできないのではないか。であれば、教師にはなるべきじゃないな、と」

とことん自己分析をするのは前出の恩師の影響が大きいが、大学時代にイギリスへ留学した際、寮で相部屋になったスウェーデン人学生からも刺激を受けた。

「彼は僕に、大学で経済を学びたいこと、そしてその理由は、将来銀行員になって国の発展に貢献したいからであるということを、理路整然と説明してみせたんです。漠然と教育に携わりたいと考えながらも、将来に対して明確なビジョンを持てていない自分が恥ずかしくなった」

長らく新卒一括採用の慣習が続く日本では、まずは初めに就職した先で一定期間、経験を積むべきだとする“石の上にも三年”の意識がいまだに根強い。しかし、深沢氏にその発想はなかった。ビジョンにまっすぐでいたい。当時感じたその思いは、今もキャリアを貫く芯になっている。

自分にとっての“教育”を実践できる場所

教育の何が魅力か。改めて自分に問い掛けたとき、「目の前の相手と向き合うこと。それによって、相手にも自分にも変化を起こせること」という原点を確認できた。その上で視野を広げてみれば、自身の考える教育とは、必ずしも教室の中で行うものではないことに気付いた。

「就職活動にあたり、いろいろな業界の情報を集める中で、コンサルティングも人を変える仕事だと考えるに至りました。例えば、自分のアクションによって経営層が変われば、その先にいる何百人、何千人もの社員の行動や思考に影響を及ぼすことになる。安易な考えと思われるかもしれませんが、当時の僕にとっては、自分の中で筋が通った実感があったんです」

マッキンゼーの採用面接で、真正面からその思いをぶつけた。「君、変わってるね」。初めはそう首をかしげていた採用担当者も、熱心な深沢氏の決意表明に、だんだんと顔色を変えた。

「いいじゃない。コンサルタントとして経験を積んでみたら」

教育への志を胸の片隅で燃やし続けながらも、「それまで思い描いたこともなかった」業界でキャリアの一歩を踏み出した深沢氏。その経験が、理想を形にするスキルの習得につながっていく。

深沢厚太
東京大学文学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、製造業のオペレーション改善などに従事。NPO法人Teach For Japanの立ち上げに参画。カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスにてMBA取得後、マッキンゼーに復職。2016年3月、LITALICOに入社。

(ライター 加藤藍子)

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