多彩な秋冬トレンド ウエスタンやレトロモダンも注目
宮田理江のファッション戦略論
2018-19年の秋冬ファッションには、多様性と主張の強まりが見られるそうです。ファッション・ジャーナリストの宮田理江さんがトレンドを解説します。
2018-19年秋冬シーズンのファッションは多様性(ダイバーシティー)が広がり、主張が強まる。ボリュームのあるシルエットや、フォークロア、カウボーイ風の装い、ストリートやスポーティーのムード、りりしいパワードレッシングなど、さまざまなテイストが提案されている。ネクストトレンドを押さえておけば、旬の着こなしを楽しめる。
トレンド1「ボリュームシルエット」
ビッグボリュームが2018-19年秋冬の最大トレンドとなりそうだ。これまでもオーバーサイズのシルエットがもてはやされてきたが、今度のトレンドではファニーなほどの量感が提案されている。朗らかなボリューム感を、フェミニンで愛らしいムードでまとうのが新しい迎え入れ方だ。
まるでテディベアのぬいぐるみを思わせるような、たっぷり量感のファーは、ボリュームルックをグラマラスに華やがせる。フェイクファー、エコファーは色染めやカッティングの面でも表現力に富んでいる。
キルティングや中綿で膨らませたボリュームアウターは来季の主役アイテムとしての期待が大きい。ファーのようにけば立った風合いのニットは穏やかな表情を帯びる。顎を隠し、長く垂らす、ビッグマフラーもトレンド小物として登場する。
トレンド2「アメリカンウエスタン」
米国の先住民族を思わせるフォークロア(民俗調)風の装いや、西部開拓時代のようなウエスタンルックが盛り上がりそうだ。カウボーイ風ポンチョ、ブランケット(毛布)型アウターなど、体の輪郭を隠す羽織物が朗らかなシルエットを描き出す。
ウエスタンはシャツやブーツなどでも提案されている。アメリカンフォークロアやボヘミアン、カウボーイの雰囲気はフリンジや、飾り袖、レースアップ(ひも編み)などのディテールにも漂う。
アウトドアやスポーティーのテイストをミックスする演出もウエスタンに交じり合う。パーカやブルゾンにもアメリカンフォークロアの薫りが重なる。タフでマニッシュなムードに、程よくフェミニンを混ぜ込むさじ加減がこなれ感を引き出す。
トレンド3「レトロモダン&テック」
レトロと未来という異なる時代をまたぐような装いが新たなムードを連れてくる。この秋冬に勢いづきそうなのは、ノスタルジーとテクノロジー感を響き合わせたようなテイストだ。じゅうたん風の質感や、古風な柄、懐かしげなシルエットなどが適度にクラシックな雰囲気を醸し出す。
一方、テクノロジーを印象づけるのは、メタリックな素材感や、ケミカルな風合い。ネオンカラーやビニール系材質なども近未来のムードを漂わせる。
レトロとフューチャーを別々に取り入れることも可能だが、両方を同居させると、さらに風情に奥行きが増す。さらにそこに現代的なモダンさもプラス。異素材のミックスも装いに起伏をもたらす。アシンメトリー(左右非対称)なフォルムや、ギミックなディテール、マルチウェイの可変タイプなどはテック感を宿している。
トレンド4「インディペンデント」
女性を取り巻く社会情勢の変化を映して、凜(りん)としたインディペンデント(自立)な女性像をファッションも描き出している。単に男っぽく強がるのではなく、センシュアル(官能的)と強さを兼ね備えた「新・パワーウーマン」が今の気分になじむ。
例えば、レースワンピースやキャミソールドレスをまといながらも、靴は編み上げブーツでハードめにアレンジ。透けるトップスには紳士服ライクなチェック柄ワイドパンツといった、たおやかさとりりしさが同居するミックスがインディペンデント感を引き立てる。
きらめき素材やワイド幅シルエットも、他人にもたれかからない芯の強さを感じさせる。縦落ち感が際立つ、ロング丈のコンビネーションは性別をぼかす。体の輪郭を拾い過ぎないフォルムは中性的な着映えに導く。柔らかい素材感がフェミニンを呼び覚ます。
気になるトレンドは1点から取り入れるのがコツ
4大トレンドに共通するのは、余計な気負いを遠ざけながらも、自分らしさを隠さない押し出しの強さだ。これまでの作法にとらわれないコーデが着こなしに自信やこなれ感を呼び込む。気になる新トレンドが見つかったら、手持ちワードローブにまずは1点だけ迎え入れるつもりで、薄く取り入れていくと、私流スタイリングを程よくアップデートできそうだ。
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートからトレンド情報、スタイリング指南などを発信。バイヤー、プレスなど業界経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした解説が好評。自らのテレビ通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。 著書に「おしゃれの近道」「もっとおしゃれの近道」(ともに、学研パブリッシング)がある。
[nikkei WOMAN Online 2018年8月18日付記事を再構成]
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