真剣勝負のeスポーツに観客熱狂 アジア大会デビュー表彰式にゲーム会社幹部、違和感も

これまで、主に個人やチーム単位で行われてきたeスポーツ競技だが、アジア大会の公開競技では、国・地域の代表として戦った。落ち着いたプレーで優勝を決めた相原選手は試合後、「日本代表に決まってから様々なプレッシャーに負けそうになったことがあった」と話した。選手が国の代表として日の丸を背負う重みは一般のスポーツとまったく変わりがないことをうかがわせた。

「eスポーツ」は公開競技だったが、正式競技と同じように表彰式でメダルが授与された(8月26日、金メダルを獲得した中国代表)=小高顕撮影

ファンも普通のスポーツイベントと同じように熱心に選手を応援していた。初日に開かれた相手の陣地を攻める人気ゲーム「アリーナ・オブ・ヴァラー」の競技には、eスポーツ人気の高い中国のファンが詰め掛けた。中国代表が優勢となると「加油(がんばって)」という声がこだました。上海から駆けつけた女子大生のザオさんは「もともとはある選手のファンとしてきたが、今は中国チーム全体を応援している」と話した。

開催国のインドネシアeスポーツ協会のエディ・リム会長は「アジア大会への(公開競技での)参加はeスポーツにとって大きな一歩だ」と評価する。五輪競技として認められるには国際的な統一団体を組織する必要があるなど、今後の課題も少なくないが、ジャカルタ・アジア大会でeスポーツが国・地域同士で競う本格的なスポーツ競技としての第一歩を踏み出した。

勝って喜びをあらわにする選手、負けて悔し涙を見せた選手――。アジア大会のeスポーツ競技を観戦して、体は動かさないものの、国・地域を背負って戦う真剣勝負は観客を熱狂させ、スポーツの新たな可能性を示していると感じた。もっとも、五輪競技と少し異なると感じたのは表彰式にゲーム開発会社の幹部が登場したことだ。eスポーツが企業主導で発展していることを図らずも印象づけた。

eスポーツはすでに中国・韓国や欧米で定着しつつある。競技場に足を運んで観戦するだけでなく、インターネット中継による観戦も広がっている。オランダの調査会社ニューズーによると、eスポーツをネット中継などで視聴した人は17年に約3億3千万人で、21年には75%増の5億8千万人になると見込まれる。上海など中国の大都市では毎週のようにeスポーツ大会が開かれているほか、インドネシアなど東南アジアでも人気が高まっている。

ゲームがスポーツか、日本では抵抗感

ジャカルタ・アジア大会で公開競技に採用されたeスポーツは、22年の中国・杭州大会で正式競技となる見通し。24年パリ五輪の採用に向けた議論も始まる中、日本国内では「ゲームはスポーツか」という根強い抵抗感がある。

海外ではすでにスポーツ界とeスポーツの連携が盛んだ。米プロバスケットボール(NBA)やアメリカンフットボール(NFL)がeスポーツに参入。国際サッカー連盟(FIFA)も8月にサッカーゲームの世界大会「eワールドカップ」を開いた。国際オリンピック委員会(IOC)は7月、スポーツ界とゲーム業界の意見交換会を初めて開き、今後も連携の可能性を継続的に議論していく方針だ。

一方、日本ではこうした機運は盛り上がっていない。2月に業界団体、日本eスポーツ連合(東京・中央)が発足し、日本オリンピック委員会(JOC)への加盟を目指しているが、議論は進んでいないのが実情だ。19年秋に茨城県で開かれる国民体育大会(国体)に参加が決まったが、正式競技ではなく文化プログラムの枠だ。

背景に体を動かさないゲームがスポーツと捉えられにくい風潮がある。スポーツ庁はスポーツを「体を動かすという人間の本源的な欲求に応える」ものと定義。スポーツといえば体を動かす競技を思い浮かべる「身体性」重視の日本に対し、スポーツの「娯楽性」を重視する欧米との文化の違いを指摘する声もある。

(鈴木淳、山田薫)

[日本経済新聞朝刊2018年9月3日付朝刊を再構成]

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