新卒理想「男性>女性」5割超

ある大手企業の採用担当者は「優秀な評価順に並べると、上位には女性が集中する」と明かす。ただ、アイデム人と仕事研究所(東京・新宿)が2017年、企業の18年新卒採用担当者901人に新卒採用での理想の男女比を聞くと「男性>女性」となる回答が53.4%。ちなみに、上場企業対象の「女性活躍度調査」(経済産業省)によると新規採用の女性比率は17年度で37.8%だ。不正入試は女性たちに「採用も男性優位では?」と波紋を呼んだ。

「主要企業の7割は大卒女性の募集・採用なしだった」。1980年に女子学生による就職情報誌「私たちの就職手帖」を創刊したジャーナリストの福沢恵子さんは創刊当時をこう振り返る。やがて86年の男女雇用機会均等法施行で転勤もこなす「総合職」女性が誕生。ただ今以上に性別役割分業意識が強く、その募集はわずか。女性の職域は限られた。状況が動くのは99年の改正均等法施行を受け、男女別の求人が原則禁止になってから。「就活に使う企業検索サイトの性別項目撤廃で男女差別は薄れた」(業界関係者)。それでも、「地方は遅れが目立つ」と金沢大学の山本均就職支援室長。過去には「男だったら採用する」と言われ、地元就職を諦めた女子学生も。「地銀が女性の積極採用を始め状況は改善してきたが二の足を踏む企業も残る」

企業が採用で「男子学生だけの点数加算や女子学生の一律減点をするのは違法」(水町勇一郎・東京大学教授)。ただ均等法の指針には「公平、公正に判断した結果、男女いずれかのみの採用は均等法違反とはならない」ともある。今津幸子弁護士は「採用選考は主観が入る。『公平・公正に判断した』と言われれば性差別かは分からない」と指摘。均等法の趣旨と企業の本音には溝もありそうだ。

競争力、女性活躍の重要性増す

「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がる」。東京医科大の調査報告書にはこれが得点操作の「理由のよう」とある。産業界も課題は同じ。「女性は採用時に総合職で働きたいと望んでも、入社後に結婚や出産で離職する可能性があるとして男性を多く採用する企業はあるだろう」(採用コンサルタントの谷出正直氏)

実際、国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査(夫婦調査)」によると2010~14年に第1子を産んだ母親の場合、出産を機に46.9%が退職。総務省の「労働力調査」(17年平均)で女性の正規雇用の割合をみると20~24歳をピークに低下する。

だが生産年齢人口が減るなか、意欲や能力のある女性が就労を継続し力を発揮できる職場づくりが欠かせない。「女性活躍度調査」で「女性活躍推進が企業の競争力に与える影響」(複数回答)をみると「従業員のモチベーション、離職防止」が15年度の48.5%から54.4%に上昇した。

多くの企業は女性を育成してこなかった。ある女性役員は周囲の期待を感じない女性の多さを指摘し「自らも動いて自分の影響力を実感しよう」と説く。「もっとやりたい」と前向きになる好循環が生まれるからだ。人材を生かすにも女性活躍は待ったなしだ。

(女性面編集長 佐々木玲子、田中浩司、潟山美穂)

[日本経済新聞朝刊2018年9月3日付]