医師を志す女子受験生を一律に減点した東京医科大学の不正入試。得点操作が映し出したのは、働く女性も無関係ではない就労差別だ。女性は扱いにくいと切り捨てる前に、多様な人材が力を出せる職場や制度が求められる。経済産業省と東京証券取引所が選ぶ女性活躍推進上場企業「なでしこ銘柄」の2社に女性の力を生かす取り組みや成果を聞いた。
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ビジョン・成果が復職の要 ローソン人事本部部長・山口恭子さん
――2005年入社から、新卒採用で男女半々を目標に掲げている。
「女性に支持される商品・サービスの開発に向け、女性が意思決定に参加できるよう雇用比率の拡大を進めた。新卒採用では男女比半々に近い数字に落ち着いている。実は1999年に改正労働基準法などが施行されるまでは新卒採用の大半が男性だった。夜間に店舗で何かあっても、女性は深夜業に制限があり職域が限られたからだ」
――若手女性社員の定着率向上での取り組みは。
「新入社員の大半は各地の直営店に着任するが女性はロールモデル不在で悩むことがある。11年から各地の新入社員が集まる年5、6回の宿泊研修に女性ミーティングの時間を設けた。店舗での経験は後々の職場でどう生きるかなどを先輩女性に話してもらい、キャリアを展望できるように支援している」
――14年度に事業所内保育施設を開き、17年度には女性社員の24.5%が母親層に。キャリア形成の支援策は。
「13年に全国の育児休業中の社員を集める研修を開始。育休取得が増え復帰後の働きぶりを疑問視する声が上がったのが一因だ。研修では次年度方針を伝え、復帰後に何ができるか考えてもらう。私自身も育休復帰者。最初は緩やかであっても、キャリアビジョンを持つよう話し『それなりの人で戻ってきては困る。成果を出そう』と期待を込めて厳しいことも伝える」
「管理職向け時短勤務制度も導入。管理職は時間管理の対象外だが『彼女は時短だから昇格させられない』との声を受け、給与設計はフルタイム勤務より下がるが、能力のある人が責任ある職務を担える制度を整えた」
――女性活躍の成果は。
「累計販売が1億本を超えた『グリーンスムージー』は育児休業中の女性が考え、復帰後に開発。16年には最も名誉な全社表彰の全てを女性が受賞。多様な価値の提供は成長の源泉だ。15年から、多様性を推進する社長のメッセージや各地の拠点で活躍する女性たちを載せたパンフレットを配布、共有している」
・東洋大学「女性活躍インデックス」2017―18統合版1位
・女性役員比率33.3%(17年度)
・男性の育休取得比率80.1%(同)