息をのむ 国際宇宙ステーションから見た地球の絶景

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/9/12
ナショナルジオグラフィック日本版

2016年1月20日、スコット・ケリー氏と欧州宇宙機関(ESA)のティム・ピーク飛行士が公開したオーロラの写真。地球の磁場・大気と高エネルギー粒子が反応して、光が舞っているように見える(PHOTOGRAPH BY SCOTT KELLY, NASA)

9月12日は「宇宙の日」。毛利衛さんが、日本人として初めてスペースシャトルに搭乗した日付にちなんで定められた記念日だ。今回は、国際宇宙ステーション(ISS)に340日滞在した、米国の宇宙飛行士スコット・ケリー氏が撮影した、宇宙から見た地球の写真を紹介したい。宇宙飛行士だけが味わえる地球の絶景をお届けしよう。

地表から400キロ上空を周回するISSで、ケリー氏が撮影したこの惑星の地形や川、運河の写真は数百枚に上る。どれも美しい抽象画のようだ。サファイアブルーの海上に不気味に渦を巻くハリケーン、霧が輝いているかのようなオーロラ。海岸、砂漠、森林、地球すべてが被写体になった。

撮影機材は、我々一般の地球人でも入手可能なものばかりだった。写真の大半はデジタル一眼レフ「ニコンD4」で撮られ、レンズはサッカーの試合を撮るのに広く使われているものと同じだ。

これらの写真のおかげで、ケリー氏には山のようなフォロワーがついた。ツイッターからTumblr(タンブラー)まで、数十万のユーザーが彼の写真に感嘆。ケリー氏の写真に写った場所がどこだか調べる「特定班」まで登場するようになった。

2016年2月16日、ケリー氏はイラン北西部にあるウルミエ湖がエメラルド色に見えるのに気付いた。ウルミエ湖はイランで最も有名な湖だが、ここ数十年で急速に水位が下がり、1970年代に比べて90%も縮小している(PHOTOGRAPH BY SCOTT KELLY, NASA)

カナダにあるノバスコシア・コミュニティカレッジ地理科学センターに所属するデビッド・マクリーン氏は、「ケリー氏の写真に見入ったり驚いたりする人々との交流は楽しい」と話す。ケリー氏の写真に位置情報を加えていく有志の「位置特定班」の中でも、マクリーン氏はひときわ影響力があった。

マクリーン氏は2013年以来、ケリー氏ら宇宙飛行士が撮影した写真を世界地図上にマッピングしてきた。だが、ケリー氏の写真は他の飛行士のそれとは一線を画しているという。

「これまでも宇宙飛行士は写真を撮りましたが、『宇宙から見たインディアナポリス』といったように、1つの都市や地域を撮ることが多かったです」とマクリーン氏。一方、ケリー氏の写真は「地球の細部に目を凝らしていました。前から知っている場所も、これまでにない新しい視点で見せてくれたのです」

ナショナル ジオグラフィックの写真部門副部長を務めるパトリック・ウィッティーは、「ケリー氏の写真は印象的で、非常に芸術的です」と評価する。「プロの写真家でないことが信じられないほどです」とケリー氏の撮影技術を称賛している。

次ページでは、ケリー氏の写真をさらに13点紹介しよう。