リーマン危機から10年 個人投資家が得た2つの教訓

資産配分を考える際は、念のため最大評価損はリーマン危機時を想定しておきたい。ざっくりしたメドは国内株や先進国株は5割、新興国株は6割、海外債券は2割程度の損失だ。

例えば、資産全体が1000万円で、先進国株と新興国株で500万円ずつ運用しているとすると、最大評価損はざっと550万円。この損失に耐えられないなら、株式の比率を減らす必要がある。リーマン危機時も半分が債券なら下落率を抑えることができた。これが2つ目の教訓だ。

年に1度のリバランス

自分に適した資産配分を決めた後、大きな上昇や下落があれば、乱れた配分比率を元に戻すリバランスを実行したい。比率が想定より高くなった資産を売り、低くなった資産を買い増して元に戻す。資産を想定していた値動きの水準に戻すのが主な目的だ。

国内外の株と債券4資産を基本配分とし、年に1度リバランスを続けた結果を試算した(グラフC)。放っておくと上昇する株の比率を元に戻し続けた結果、08年の下落率を抑えられた。上がった資産を一部売り、下がった資産を一部買い続けるため、長期のリターンも高まりやすい。

世界経済に火ダネ

危機の予兆はある。日本に大きな影響がある米国景気の戦後の拡大期間の平均は約5年だが、今はもう10年目。景気後退局面でほぼ共通する予兆は長短金利の逆転だ。2年物国債などの短期金利が長期金利(10年物国債金利)を上回って1年超たつと景気後退が起きてきた(グラフD)。

経済実勢を表す体温といわれる長期金利を、中央銀行の政策金利に左右されやすい短期金利が上回る状況は、引き締め効果が強くなりすぎていることを示す。米利上げに伴い、長短金利差が近づき、先月下旬には一時0.2%弱まで縮小した。早ければ年内にも逆転が起こる可能性がある。

米利上げで新興国から資金流出が起きているし、米中貿易戦争による世界経済の下押し圧力も心配だ。一方で、米国では「利上げ早期打ち止め論」も浮上。景気拡大が予想外に長引く可能性も捨てきれず、断定的な予測は困難だ。

次に危機が来たときに動揺して投資をやめてしまうか、続けられるか。それが長期の資産形成の分かれ道になることをリーマン危機が教えてくれる。

(編集委員 田村正之)

[日本経済新聞朝刊2018年9月1日付]

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