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コーヒー・ラーメン店が月額制 看板商品でファン拡大

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NIKKEI STYLE

今や音楽ソフトや電子書籍で「聴き放題」「読み放題」のサブスクリプション(定額制)は常識となった。そんな流れを受けたのか、飲食業界でも様々な業態で「月額制サービス」を打ち出す店が出始めた。その先べんをつけたカフェとラーメン店でサービスを味わってみた。

 ◇   ◇   ◇

月額制カフェのはしりは、2016年10月に東京・西新宿に開店した「coffee mafia」(コーヒーマフィア)のようだ。同店を運営するfavy(東京・新宿)広報担当の加納美優子さんは「米国で定着しつつある定額制コーヒースタンド文化を日本でも広めたいと、社長の高梨巧がクラウドファンディングで立ち上げた」と説明する。同社は飲食関係のマーケティングやメディア運営を手がけるが、1月には2号店の飯田橋店も開店した。

最も新鮮な豆、品質こだわる

coffee mafiaの月額サービスは3種類。コーヒーMサイズが来店ごとに1杯無料となる2000円会員(西新宿店のみ)、同じくLサイズが1杯無料の3000円会員が基本だ。さらに6500円会員になると通常のコーヒーのほか、バターコーヒー、カフェオレ、バニラオレなども選べ、夜のバル営業ではビールとハイボールの割引特典が付く。1来店ごとに1杯なので1日3回通えば3杯無料だ。

飯田橋店店長の奥村紘一郎さんは「コーヒーの品質にかなりこだわった」と話す。「その時々に仕入れた最も新鮮なシングルオリジンの豆を使い、すべてハンドドリップでいれている」。コーヒーは客の好みで「しっかり」と「あっさり」の2種の味を選べる。しっかりタイプのコーヒーを飲んでみると、深い味わいながら雑味がなくすっきりと飲みやすい。リピーターが増えると思わせるクオリティーだった。

「会員は平均して月20回ほど来店している。利用頻度が上がるほど店には損だが、月額サービスの目的は目先の利益ではなくお客様との接点を増やすこと」(奥村店長)。実際に同店のランチ営業や夜間のバル営業への誘導にも貢献しているという。

coffee mafiaでは月額制以外にも新サービスを始めている。今夏には「100円生ビール」を実施した。今後は駅の近くを中心に店舗数を増やしていきたいという。

より意外性があるのはラーメンではないだろうか。首都圏を中心に16店舗を構える「野郎ラーメン」では、17年11月から月額制の「1日一杯野郎ラーメン生活」をスタートさせた。

サービスの対象は食べ盛り・働き盛りの18~38歳に限定している。月額8600円の定額会員になると3種類のラーメンのどれかを1日1杯食べることができる。看板商品で780円の「豚骨野郎」なら12杯で元が取れる計算だ。

野菜はすべて国産、味はあっさり

だが、いくらラーメン好きでも、同じ店にそれほど頻繁に足を運ぶものだろうか? そんな疑問を野郎ラーメンを運営するフードリヴァンプ(東京・世田谷)PR広報部の黒木勝巳さんに問いかけると「実は社内でも『あまり会員は集まらないだろう』と話していた」との答えが返ってきた。

しかし調べると、各店舗に週2~3回来店する客はそれなりにいることが確認でき、サービス開始に踏み切ったという。黒木さんは「サブスクリプションはそれら顧客に向けた感謝と顧客還元の思いから始めた。フタをあけてみると予想外に会員が集まり、そのうちの8割がしっかり元を取っている」。会員の韓国人留学生から「1カ月の食費が計算できて助かる」と感謝されたこともあるという。

実際に「豚骨野郎」を味わってみると、太麺に絡むスープは意外とあっさりしていてするっと食べられる。野菜は全て国産、チャーシューは柔らかさが特徴のスペイン産ブランド豚を使っている。

客にとって食べるほど、飲むほどに得になる定額制。店側にとって提供する商品に早く飽きられてしまうリスクもあるが、coffee mafiaと野郎ラーメンでは、いずれも看板商品で勝負し、ファンを増やしているようだ。そのあたりが「安かろう……」と思われることもあった従来型の食べ放題との違いなのかもしれない。

(ライター 大谷 新)

[日本経済新聞夕刊2018年9月1日付]

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