キャラクターとの記念写真 ネット公開して大丈夫?
パソコン&ネット法律相談所(1)
SNSやYouTubeで誰もが情報を発信できる時代。「誰も見ていない」と思って載せた動画が訴訟の対象になったり、自分が撮影した写真が勝手に使われたりと、著作権は今や身近な問題だ。今回は、その中でもキャラクターに関する法律的な疑問に回答する。
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「権利侵害」というと堅苦しいが、著作権の目的はオリジナリティーのある作品をつくった人の権利を守ることで、文化の発展を目指すことにある。著作権法を気にし過ぎて自由な創作ができないのでは本末転倒。何がよくて何がいけないのか、理解して創作や発信を楽しもう。
著作権法の保護対象である著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」である。具体的には、書物、言語、音楽、絵画、建築、図形、映画、コンピュータープログラムなど、さまざまな創作物が該当する。著名人に限らず、学生が書いた作文も立派な著作物だ。
著作者には、著作物をいつどのように、どんな著者名で公表するかなどを決定する「著作者人格権」と、著作物を印刷する複製権や上演する上演権などの「著作(財産)権」が付与される。
著作権の保護期間は、著作者の死後50年(映画は公表後70年)。それ以降は許可を得ずに使用可能だ。保護期間内に著作者の許諾なしで使用すれば、著作権法違反となる。
現状では告訴があることを必要とする「親告罪」なので「バレなければいい」と考える人もいるようだが大きな間違い。TPP関連法案の成立により、非親告罪化と保護期間70年への延長は目前に迫っている。知らぬ間に権利侵害にならないよう注意したい。
A.キャラクター主体の場合、ネット公開すれば著作権法違反に問われる危険性あり
気軽に撮影に応じるテーマパークのキャラクターを見れば分かるように、撮影自体は基本的に自由だ。問題はブログなどへの掲載。日経パソコンが独自に実施したアンケート(注)では36.8%の人が「問題ない」としているが、注意すべき点は多い。
キャラクターや建物のみの写真は著作権、ほかの客の写り込みは肖像権、パレードのビデオは音楽やダンスの著作権に触れる恐れがあるため、SNSやブログなどへの掲載は危険だ。
主役が家族や友人であり、建物やキャラクターがやむを得ず写り込む場合は問題にならない可能性もある。著作権法は、対象とする事物と分離が困難な著作物の写り込みは、軽微であって著作権者の利益を不当に害さない限り複製を認めている。
東京ディズニーリゾートでは、商業目的の撮影や「他のお客様等のご迷惑となる撮影および、公衆送信」を禁じている。三脚や自撮り棒は禁止だ。状況によっては撮影禁止になることがあり、疑問があれば「当日キャストにご確認ください」としている。楽しい思い出にしたければ、施設ごとの規定に従うようにしよう。
A.販売目的であれば写真を掲載できる
先ほど、キャラクターが写った写真や動画の掲載は著作権侵害に当たる可能性があると説明したが、オンラインショッピングやネットオークションのサイトでは、さまざまなキャラクターグッズの写真が堂々と掲載されている。著作権侵害にならないのだろうかと、不思議に思っている人もいるだろう。
事実、以前は商品写真であっても複製権や公衆送信権を侵害する可能性が指摘されていた。しかしWebサイトでの通販やオークションでは、商品を手に取って確かめるのは不可能だ。そこで、平成21年に法改正があり、美術品や写真をオークションサイトなどで販売する場合に限り、商品画像の掲載が認められるようになった。
こうした特例は、「著作権の制限」と呼ばれ、その規定に従えば著作権者の許可なしに使用できる。レンタルビデオサイトなど、貸与の場合も商品写真の掲載は可能だ。ただし、いずれも画像のサイズは3万2400画素(コピーガードしている場合は9万画素)以下に限定されている。
(注)アンケートの内容は、法律に関するユーザーの意識を調査するもの。法律的な正解を問うのではなく、自分がどう考えるかを答えてもらう形で質問した。調査は日経BP社のWebサイトで2018年7月1日から同7月13日まで実施し、315人から有効回答を得た。
(ライター 鈴木眞里子、法律監修 西村あさひ法律事務所)
[日経パソコン8月27日号の記事を再構成]
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