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タイ洞窟救出劇で考える マインドフルネス瞑想の効用 こちら「メンタル産業医」相談室(26)

日経Gooday

2018/9/21

2018年7月18日に行われた記者会見で自己紹介するサッカーコーチのエカポン・チャンタウォーンさん(REUTERS/Soe Zeya Tun)

ようやく残暑も和らいできましたが、あなたの心と体はお元気でしょうか? こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。今回から2回にわたり、近年話題になっているマインドフルネス瞑想(めいそう)について、タイの洞窟救出劇の振り返りとともに考察してみたいと思います。

■世紀の救出劇で再注目されたマインドフルネス瞑想

日本でマインドフルネス瞑想が注目され始めて数年がたち、急速に過熱したブームも若干鎮静化しつつあるようです。

集中力がつく、雑念に惑わされず仕事力が上がる、心が穏やかになる、体の健康にも良いなどとメディアや本で紹介される中、興味をかき立てられてセミナーに出たり書物を読んだりして、「実践してみた」という方も多いでしょう。しかし「何日かやってみたが、効果が実感できないので中止した」「毎日早起きして瞑想しようと意気込んでいたが、忙しさに取り紛れていつの間にかやめてしまった」という人も実は少なくないようです。

筆者自身も「メディアが騒ぐほどミラクルな即効性のある自己実現スキルじゃないんですね」というような声を何度か耳にしたことがあります。確かにその通りであり、マインドフルネス瞑想は「心の筋トレ」と表現されるように、コツコツと継続していくことで効果がじわじわと出てきます。筆者もすでに3年以上毎日瞑想を継続していますが、その効果は「牛歩のごとし」。ゆっくりと確実に良い変化は起こってくるのですが、とにかく根気と時間が必要な心のトレーニング法なのです。多忙な人が挫折してしまう気持ちもよく理解できます。

さてそんな中、2018年7月、タイの洞窟の中に2週間以上にわたって閉じ込められていたサッカーチームの少年12人と25歳のコーチ1人の世紀の救出劇が報道され、再びマインドフルネス瞑想が注目を集めました。6月23日に閉じ込められ7月2日に発見されるまでの間、少年たちは真っ暗闇の洞窟の中、壁を伝って流れてくる水だけを飲みながら空腹に耐え、コーチの指導する瞑想によって平静を保っていたというのです。

筆者もイギリス人ダイバーたちが発見時に少年たちと会話している動画を見ましたが、11~16歳という多感で不安定になりやすい年ごろの少年たちが誰一人としてパニック状態に陥らず、落ち着いた表情で時には笑顔を見せながら、ダイバーたちと会話している様子に驚きました。

仮に閉じ込められたのが大人だったとしても、救助が来るかどうか分からない文字通り「一寸先は闇」の状態の中で何日もの間空腹にさいなまれながら心を平静に保つのは非常に難しいと思います。私がもし同じ状態に置かれたらと想像するだけで、ゾゾゾーッと背筋に恐怖が走り心臓がバクバクしてきます。

様々なメディアでは、サッカーコーチのエカポン・チャンタウォーンさんが少年たちに仏教式の瞑想を教え実践していたことによって、彼らが平静を保つことができたと報道されました。

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