「8月からは衣料品の顧客を対象に、人工知能(AI)を活用して一人ひとりの好みに合わせた個人仕様のカタログ印刷も始めました。表紙には、顧客の名前や購入した商品を書き込むなど、開いて見てもらう工夫をしています」

――マーケターとしての転機は?

ネット通販でも、結局大事なのは商品とその提案方法だ

「新卒で入社したSBIホールディングスで(利用者の好みに合いそうな商品や広告の内容などを利用者の属性や購買履歴、閲覧履歴などに応じて変更する)レコメンドエンジンを開発、販売するビジネスを立ち上げ、300社ぐらいに導入してもらいました。そこで顧客企業のマーケターと話すうち、『自分が見ているのはすごく表面的な数字で顧客の本質的な課題を解決できていないのでは』と思うようになりました。そこでツールを使う側に身を置こうとマガシークに転職しました」

「デジタルマーケティング理論」、あまり意味ない

――デジタルマーケティングを実践する中で学んだことは。

「デジタルマーケティングと呼ばれる、ほとんどのものにはあまり意味がないということです。例えば『ボタンの色が緑だとコンバージョン率(成約率)が5%上がる』という類いのことが言われていました。でも冷静に考えれば、ボタンが緑だから購入しようと思う人はいません。レコメンドエンジンの精度を研ぎ澄ますのもあまり意味がない。色々な理論ややり方はありましたが、どれもほぼ一緒でした。結局、大事なのは商品や見せ方などオファー(提案)の中身なんです」

「ネット利用者の閲覧行動などを自動で解析するマーケティングオートメーション(MA)が最近話題ですが、いきなり導入しても売り上げは増えません。MAというのは運用ノウハウを自動化するものです。ノウハウがないのにこれだけ入れてもだめなんです。ある程度の勝ちパターンを見つけ、それを『うまく運用するには人手がかかるが、人は増やせない』となった段階で、ようやく自動化の意味が出てくるのです」

――マーケターに求められる資質は?

「商売っ気ですね。商品やお客さんを見て、いつ何が動くのかと考える感覚が必要です。理論だけを押し通して、商材や会社が変わっても同じことをしているマーケターはうまくいかないと思います。数百のサイトを見てきましたが、これだけやっていれば伸びるなんていう理論やツールは見つかっていません。泥臭いようですが、地道に市場や顧客を見ていくしかない。そのプロセスを飛ばして企業を勝ちに導くことはできません」

石川森生
2008年、SBIホールディングス入社。ネット通販を支援するSBIナビ(現ナビプラス)の立ち上げに参画。マガシークでマーケティング部門の責任者を経て、14年に製菓グッズ通販サイト「コッタ」を運営するツクルの社長就任。16年、ディノス・セシール入社し、CECOに。

(安田亜紀代)

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