ギャグ・下町人情… 平和映した70年初めの家族ドラマ家族ドラマに歴史あり!(2)

「ありがとう」と並び、高度経済成長期の代表作となった「時間ですよ」
「ありがとう」と並び、高度経済成長期の代表作となった「時間ですよ」

70年代前半の高度経済成長期はホームドラマ全盛期だった。

「ありがとう」が民放ドラマで史上最高視聴率を記録する中、TBSはプロデューサーの石井ふく子を一人勝ちにはしなかった。対抗軸として、久世光彦という希代の演出家も局内に共存したのである。石井が王道なら、久世はいわば覇道。その代表作が大ブームを巻き起こした異端のホームドラマ「時間ですよ」である。

銭湯の松の湯を舞台に、女将さん役の森光子を筆頭に、船越英二、松山英太郎、松原智恵子らが家族を演じ、そして従業員役で、堺正章・悠木千帆(現・樹木希林)・浅田美代子の3人が「トリオ・ザ・銭湯」と呼ばれ、コメディリリーフとなった。王道の「ありがとう」と異なるのは、下町の人情劇がベースながら、ギャグやドタバタ、更には毎回のお約束の女湯のヌードシーンなど、徹底した攻めの姿勢だった。

この水曜9時の枠は「水曜劇場」と呼ばれ、その後も久世演出の異端のホームドラマが続いた。作曲家で、演技経験ゼロだった小林亜星を主役に抜てきしたドタバタ系ホームドラマの「寺内貫太郎一家」に、郷ひろみと樹木希林の絶妙のコンビワークで「林檎殺人事件」なる挿入歌まで出したコメディ全開の「ムー」の続編「ムー一族」等々。

1970年代前半から半ばにかけ、TBSは石井ふく子と久世光彦の両輪が回転して、ホームドラマ全盛期を謳歌したのである。

日テレは石立鉄男のシリーズ

他にも、70年代にスマッシュヒットを飛ばしたホームドラマといえば、日本テレビの石立鉄男主演のユニオン映画制作のシリーズもその一つ。「おひかえあそばせ」「気になる嫁さん」「パパと呼ばないで」「雑居時代」等々である。

同シリーズの構造は、ストーリーは違えども大体同じで、ひょんなことから一家の中に外部から新顔が加わり、諸事情から一つ屋根の下で家族同然に暮らすというもの。そこで巻き起こる騒動をコメディタッチで描いたホームドラマである。

一つ屋根の下に暮らす男女が最初は反発し合いながらも、やがてひかれ合うプロットは、その後、様々な派生ドラマを生み、近年では「逃げ恥」(TBS)にも生かされている。その意味でも、同シリーズがドラマ史に果たした役割は大きい。

ホームドラマに変化の波

しかし、70年代に入って全盛期を迎えたホームドラマだが、1973年にオイルショックが起きると、日本経済は高度成長に急ブレーキがかかり、低成長時代へとシフトする。それに合わせるかのように、社会を取り巻く様々なゆがみも噴出した。

ホームドラマも例外ではなかった。70年代後半、それまで明るく平和な小市民の幸せを描いてきたホームドラマに、変化の波が訪れる。それは家族のあり方を問い直すものだった。鍵はリアリティである。

そう、ホームドラマの時代は終わりを告げ、リアルな家族ドラマの時代が幕を開けようとしていた。くしくもそれは、2人の大物脚本家によってもたらされる。橋田寿賀子脚本の「となりの芝生」(NHK)、そして山田太一脚本の「岸辺のアルバム」(TBS系)である。

指南役
草場滋 メディアプランナー エンターテインメント企画集団「指南役」代表。テレビ番組の企画原案、映画の原作協力、雑誌連載の監修などメディアを横断して活動中。「日経エンタテインメント!」誌に連載中の「テレビ証券」は18年目。

「時間ですよ」 (C)TBS

[plusparavi(プラスパラビ) 2018年8月20日付記事を再構成]

「時間ですよ」 (C)TBS

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