テレビのCMでよく見かける美容整形について、日本で初の実態調査の結果が7月に明らかになりました。日本美容外科学会が国内の医療機関を対象に集計したところ、2017年の施術数は190万件に達しました。これを16年の国際統計に当てはめると、米国(422万)、ブラジル(252万)に次ぐ世界3位という結果です。
国際統計には整形関連の医師数が多い韓国や中国が含まれていないため、世界3位は暫定的かもしれません。ただ施術の中身を分類すると、日本独自の傾向が浮かび上がってきました。
まず美容整形にはメスを使う外科手術のイメージがありますが、日本では少数派であることが分かりました。施術数に占める外科手術の割合は15%と、世界全体(44%)を大きく下回ったのです。これは裏返すと、日本ではしわやたるみを抑える薬剤注射やレーザー脱毛などのいわゆる「プチ整形」が施術の主流であるということです。
外科手術は一般的に術後の回復期間が長く、元に戻すのも難しいと言われています。今回の調査委員長を務めた吉村浩太郎・自治医科大教授は「日本人は美容整形で大きなリスクをとりたがらない」と話しています。
手術をする部位にも海外と異なる特徴が見られました。世界全体では乳房やお尻など全身が手術の対象となっていますが、日本では顔と頭部に手術の92%が集中していたのです。
特に一重を二重に直すなど「まぶた」に関わる手術は全体の6割近くを占めました。一方、世界では豊胸と脂肪吸引の手術がそれぞれ十数%を占めたのに対し、日本では3%程度にとどまりました。吉村氏は「海外で強い体のラインを直すニーズが、日本では相対的に小さい」と分析しています。
美容整形をする動機の研究も進んでいます。関西大の谷本奈穂教授は近著で「女性は母親や友人など同性との会話が整形の重要な契機になっている」との説を展開しています。2000人を対象とした調査の結果、整形の経験者は外見について同性からの助言を重視する割合が未経験者より高かったのです。「『ちょっとシミをとったら?』といった何気ない会話がきっかけになっている」(谷本氏)