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今も100万人居住 中国、地下核シェルターの実像

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/9/9

中国政府は2010年、家主がこうした状態を放置していることや、安全上の欠陥があることを問題視し、核シェルターやその他の格納スペースを住宅に利用することを禁じた。しかし、シェルターから人を一掃することは難しく、成果は上がっていない。大きな理由は、地下シェルターの住人たちには、ほかに行き場がないことだ。

北京の住宅価格は高騰し続け、住宅用不動産の価格は2017年の時点で1平方メートルあたり平均5820ドル(65万円弱)と、世界で3番目に住居費が高い都市になっている。

■コミュニティーセンターに使う例も

それでも、より大きなチャンスを求めて地方から首都・北京に移る人が後を絶たない。ただ「戸口」という時代遅れの戸籍制度では、社会保障は出生地と結び付けられているため、福祉的な援助は期待できない。

トロンボーンを演奏するミュージシャン。大紅門地区の文化芸術会館という活動センターで(PHOTOGRAPH BY ANTONIO FACCILONGO)

公営住宅は手ごろだが、入居する機会が限られているため、移住労働者にとって、地下の核シェルターは数少ない現実的な解なのだ。ファシロンゴ氏によると、小さな部屋は1カ月わずか40ドル(4400円程度)。10人ほど暮らせる共同部屋なら、月に20ドル(2200円程度)で入れるという。

住人の多くは野心に燃える若者たちで、地下暮らしは一時的なものと考えている。経済力がつけば、窓があり日光が差す部屋に移るつもりなのだ。

大学生のシェン・ズーさんとシャオ・シーさん(いずれも24歳)。ノン・イン地区の地下シェルターで暮らしている。大きな目標を達成するまでの間、あくまで一時的にここに住むつもりだ(PHOTOGRAPH BY ANTONIO FACCILONGO)

最近では、空いたシェルターをコミュニティーセンターに転用しようという団体も現れている。また、ファシロンゴ氏の写真には、ビリヤード場、カラオケ店や書道教室などに使われている様子が収められている。

こうしたセンターができたことで、北京のコンクリートジャングルに暮らす住民たちの間に、社会的な階層を超えて付き合う機会も生まれている。ファシロンゴ氏の言葉を借りれば、「地下シェルターは、『富める者も貧しい者も家を見つけられる』場所となり、社会を団結させる力になっている」のだ。

次ページでは、核シェルターの入り口や、シェルターを利用する人々を写真で紹介しよう。

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