日経マネー

2018/9/20

ここで、初期認知症で入浴にも歩行や会話にも問題がなく、要介護2と認定された一人暮らしの人(仮にAさん)が、該当する1割負担で介護保険を使った場合の自己負担額を概算してみよう(※)。月水金の3日は、食事の用意や火の元の確認のため訪問介護30分以上60分未満(3940円)を朝昼晩3回利用。火木土は昼間の7~8時間過ごせる通所介護(7610円)と訪問介護(3940円)を朝夕の2回利用。日曜は毎週、娘か息子が一緒に過ごし介護保険は使わないことにする。

※この概算は、『入院・介護のお金」(技術評論社刊/畠中雅子、新美昌也共著)の介護保険制度のパートを参考に、目安として編集部がプランを立て算出。実際のケアプランはケアマネジャーと相談しながら作成。また費用は通所介護の食事・入浴費なども別途かかる

4週間分だと(3940円×15回+7610円×3回)×4週間=32万7720円。Aさんの利用限度額19万6160円までは1割負担のため支払いは1万9616円。残りの13万1560円は全額負担となり、計で15万1176円が4週間で介護サービスだけに必要な費用となる(注:1単位を10円として換算。単位単価は地域などで異なる)。訪問介護の合間に一人で外出し迷子になる心配や夜中に目覚めて暗闇で転ぶリスクは見守れない。出費の限界に、配偶者や子供の介護離職が起きるゆえんだ。

情報を集められる、これから老後を迎える世代

これから老後を迎える40代~60代は、ネットリテラシーも高く、情報収集が得意な世代だ。「自分の志向に合った将来の住まいも安心の確保も情報を集め、自分で決められる時代」と畠中さんは強調する。

「私も好奇心の赴くまま、300ほどの高齢者用施設を見学してきました。老後の生活の場は人件費の改善などで年々質も上がっている。夫婦世帯でも単身でも、いつか見守られながら安心して暮らせる施設への住み替えも選択肢に加えて見学に行くといい」と話す。

在宅介護が意外に高額な上、大きな負担を伴う可能性については前述の通りだ。

「報道される悲惨な事件の起きた施設しか知らないのは残念。実際にホテル並みに快適な特養や、ここ数年で増設が進むケアハウスの他、良心的な価格の民間の老人ホームもある」。色々な住まい方と、リアルなコスト、家族の負担と自分のストレスも勘案し、最善のプランを立ててほしい。

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「親の介護費用は親の資産」で確実に記録を

親の介護費用は親の資産で賄うのが鉄則だ。理由は2つ。次世代には次世代の人生100年がある。将来、自分自身の介護費を捻出できなくなるリスクをなくすため。次に、親が他界した時の相続税を減らせるから。「財産を多く子に残したい親もこの説明で理解してくれるはず。家族で話し合い預貯金の残高、金融機関の通帳・印鑑の保管場所などの情報共有を。決めたルールや出金ごとの使途と金額は、領収書などと一緒にノートに記録を」(畠中さん)

(日経マネー 太田留奈)

[日経マネー2018年8月号の記事を再構成]

日経マネー 2018年 10月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)