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エスカレーター、なぜ両側立ちは普及しないのか?

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

エスカレーターの片側に利用者が立ち、もう反対側は急ぐ人のために空けておく「片側空け」。地域によって右に立つか、左に立つかの違いはあるが、今では国内はもとより海外でも普及している習慣になっている。だが鉄道会社や日本エレベーター協会などは危険防止の観点から「歩行禁止」を呼び掛けているのをご存じだろうか。歩行禁止を徹底するため、エスカレーターの片側を追い越し用としては使用しない「両側立ち」を一つの理想に想定している。ところが、この両側立ちは認知度がまだ低く、実際には片側空けの習慣が崩れていないのが現実だ。

なぜ両側立ちがなかなか普及しないのか? エスカレーターのスムーズな利用法はどれがいいのか? 「渋滞学」の視点から専門家に読み解いてもらった。

片側を使わないと渋滞の原因に

片側空けの大きな問題の一つはエスカレーターの輸送量が下がってしまうこと。「特にエスカレーターの片側を誰も使わずに空けておいたままにしておくと、渋滞が起きやすくなる」。渋滞学の権威で東京大学・先端科学技術研究センター教授の西成活裕さんはこう弊害を指摘する。

流量(ある地点を単位時間当たりに通過する人数)の計算から考えてみよう。

2人用の場合、エスカレーターのステップの寸法は、幅が約120センチ、奥行きが約40センチ、1段の高さ(蹴上げ)が約21センチ。通常は前の人になるべく接触しないように1段空けてエスカレーターに乗ることが多い。なぜなら空間にそれほど余裕がなく、前後の利用者で互いに体が接近するのをためらう傾向があるためだ。さらに利用者が大きな荷物を持っていると、物理的にどうしても1段空けないと乗りにくい事情もある。

エスカレーターの運行速度は毎秒50センチ前後。もし利用者が片側だけに立ち、もう一方の片側はまったく利用せず、通常のように1段空けて乗った場合、エスカレーターの輸送量は毎秒0.625人になる。西成さんによると「平地での群集の最大流量は毎秒1.4人」なので、混雑時にはエスカレーターの乗り口に最大で毎秒1.4人のペースで押し寄せてくる群集に対して、輸送量がまったく追いつかない計算になる。

群集の最大流量は毎秒1.4人、追いつかない輸送量

無理をして1段も空けない状態に詰めても、輸送量はその倍の毎秒1.25人。平地での群集の最大流量の毎秒1.4人をなお下回ったままだ。いずれにしても、片側を使わないと混雑時には渋滞が起きやすいという理屈になる。

では、なぜエスカレーターの片側がガラガラになりやすいのか?

理由は容易に想像がつく。

たとえば地下鉄の駅がかなり深く、エスカレーターが非常に長い場合、ステップを上ったり下りたりするのは相当に疲れるので片側がガラガラになりがちになる。また、深い場所になくても、今年のような酷暑の場合なら、エスカレーターを上ったり下りたりするのはかなりつらい。「エスカレーターの片側はガラガラなのに、もう片側は大行列」というのは我々がよく目にする光景だ。

こうした場合、使わない片側が機能不全を起こしてしまう。混雑時には、たちまちエスカレーターの乗り口の周辺に行列ができ、深刻な渋滞を引き起こす。血管にたとえれば、動脈硬化を起こして血管内部が細くなり、血液の流量が一気に落ちてしまったような状態だ。駅のホームから客が転落する事故にもつながりかねない。

両側立ちの効用、西成教授の改善策とは?

こうした実情を踏まえ、「かなり混雑しているときには駅員などスタッフを乗り口に配備し、両側立ちをもっと積極的に利用者に呼び掛けてもよいのではないか」と西成さんは考えている。片側をガラガラの機能不全にしておくより、両側立ちで機能させた方がよほど効率的というわけだ。

通常の1段空けで使っても、両側立ちならば輸送量が毎秒1.25人にまで高まる。さらに無理をして1段も空けない状態で使えば輸送量は一気に毎秒2.5人に増える。もし、これが実現できれば、平地での群集の最大流量の毎秒1.4人を大きく上回る。できるだけこれに近づける努力をすれば、かなりスムーズにエスカレーターを利用できるはずだ。ひとつの有効な改善策になるかもしれない。

しかも両側立ちはエスカレーター上を歩行しないので、接触によるケガや転落事故のリスクも減る。安全面のメリットも大きい。

ただ、両側立ちを社会に普及させるためにはハードルがいくつかある。

一つは片側空けのルールがすでに浸透しており、両側立ちをしても「道を空けろ」などと後ろから催促されたり、強制されたりする可能性があることだ。利用者同士のトラブルを招きかねない。また、もし近くに階段があれば「急いでいる人は階段を使って」と言えるが、施設のスペースや設計の都合で階段が設置されていないケースも少なくない。

片側空けがなくならない理由 現実も無視できない鉄道会社

片側空けには急ぎたい人、ゆっくり行きたい人など様々な客の状況に柔軟に対応できる良さがある。しかも片側空けで追い越し用の片方も歩行しながら使えば、エスカレーターの輸送量は両側立ちよりも増える。こうした利点も片側空けが社会に受け入れられている理由だろう。とにかく、いったん社会に広く定着した習慣を崩すのはなかなか容易ではないのだ。

「安全が最優先なのは間違いない。とはいえ、すべての利用客に両側立ちを強要するのは難しい」。JR東日本、東京メトロなど鉄道各社はこう口をそろえる。片側空けの支持者がまだまだ多く、両側立ちを強要したら猛烈な苦情が殺到するのが目に見えているためだ。やはり民間のサービス業は客からのクレームに弱い。苦しい立場が透けて見える。

こうした状況を踏まえて、全国の鉄道会社や空港、日本エレベーター協会などが取り組む安全キャンペーン「エスカレーター乗り方大賞」では、守るべきポイントとして、(1)手すりにつかまる(2)黄色い線の内側に立つ、(3)荷物をしっかり持つ――の3点をあげているが、両側立ちを強要することは微妙に控えている。

接触・転落… 片側空けのリスクにどう対処?

安全面から見ると、片側空けには多くの問題が指摘されている。

怖いのは接触による事故のリスク。利用者が大きな荷物を持っていたり、障害があったりする場合などには、追い越す利用者と接触し、思わぬケガや転落事故を招く恐れもある。日本エレベーター協会によると、「本来、エスカレーターは立ち止まって乗ることを前提に造られている」という。公共の階段よりもステップの高さや奥行きが大きいので、歩くとつまずきやすいからだ。

「ステップの高さや奥行きを小さくして、歩行を前提にしたエスカレーターの規格をつくるのも一案かもしれない」と西成さんは言う。

安全第一という原則に異を唱える者はいないだろう。ただ、社会に定着した習慣への支持者が多いという現実も無視できない。メリット、デメリットを論理的に議論しながら、時代、社会の変化に適応したマナーを自分たちで冷静に考えてゆくしかない。

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