「死に直面するような病気を経験した人は、社会や仕事に対する価値観が変わり、セルフイメージも変化し、自分の生き方を再構築することが必要になってきます。そのときに、人間は何のために生きているのか、死とは何かという問いは、ごまかさない限り普通に出てくるでしょう。そうした問いにしっかりと向き合うことで、生き方の立て直しができると思います。生き方を再構築するには、安心できる環境で対話することが有益だと考えます」と中岡さんは話す。

音楽を活用した哲学対話も検討中

おんころカフェは基本的に、毎月第2金曜の午後5時30分~と第4土曜の同2時~、大阪大学最先端医療イノベーションセンター2階の会議室で開催している(2018年9月のみイレギュラーで第4土曜がなく15日(土)同2時~)。所要時間は約2時間。不定期だが東京でも開いている(スケジュールはホームページまでhttps://oncolocafe.com/)。

対話の際に発言した、希少がんを経験した男性会社員は、敷地内にある大阪大学医学部附属病院に入院していたことからおんころカフェを知り、度々訪れている。「ここはがん経験者以外にも色々な人が参加します。話の内容が豊富で勉強させてもらっています」と話す。

「今後は、音楽を活用した哲学対話も考えたいと思っています。歌詞もそうですが、メロディーが支えになるという人もいますから。話すことが苦手でも、好きな曲や心に残る音楽を通してなら、何らかの表現ができるかもしれません。また、出張おんころカフェのように、対話を必要とする人に届くような活動も検討していきたいです」(中岡さん)

同じ病気を経験した患者やその家族が集う患者会は全国各地にあるが、おんころカフェのようにがん患者が死について深く踏み込んで語り合える場を私は初めて知った。

私自身、がんと告知されたときは、はるか遠くにあった死が、突然、すぐ近くにやってきたように感じ、眠れない日々を過ごした。対話に参加して、「死は怖いけれど、そこに意識を持っていかず、毎日の小さな幸せに目を向けるようにしている」と発言。がんになった後、完治するのか先が見えない不安の中にいたが、年月を経て、自分の生き方を立て直せていることに気付いた。

がんになった人にとって生死を深く考えることは、死の恐怖を経験しているだけに苦しさがあるかもしれない。しかし、死や生とは何かという問いに向き合って出てくる言葉は、自分自身を支えているように思う。

(ライター 福島恵美 ※悪性リンパ腫を経験、カメラマン 水野浩志)

中岡成文さん
 哲学相談おんころ代表理事、哲学者、元大阪大学大学院文学研究科臨床哲学教授。同大学在職中に、哲学者で元大阪大学総長の鷲田清一さんと「臨床哲学研究室」を創設。医学系研究科「医の倫理学」でも教えた。同大学コミュニケーションデザイン・センター(現・大阪大学COデザインセンター)初代センター長。退職後、2016年5月に「おんころカフェ」を始め、17年4月に一般社団法人を設立。

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