パソコンやスマートフォン(スマホ)のデータにクラウドサービスの契約など、ひと昔前には考えられなかった「デジタル遺品」がトラブルを巻き起こしている。デジタル終活をおろそかにした人の末路を見て、自分のデジタル遺産をどうすべきか考えていこう。パスワードはセキュリティーの面からも必要だが、「死」に際してはあらぬ疑惑を呼び、遺族の壁にもなる。
解除してもしなくてもパスワードはトラブルのもと
「ロックを掛けるなんて怪しい」と、解除を依頼したAさん。結果、妙なファイルはなく、残ったのは解除料金の請求書と、ほかの遺族からの抗議の声。遺品のロック解除はプライバシー侵害ではないが、相続人全員の同意が必要だ。
「家族の写真があるはず」とパソコンに詳しい知人にロックを外してもらったBさん。見つかったのが不倫旅行の写真では、泣くに泣けない。逆に「見られたくないのだから」とパソコンをそのまま廃棄したCさんの場合、パソコンから会社のファイルや個人情報が流出して大問題になってしまった。
つまり、デジタル終活において、遺品となるファイルにパスワードをかけることは百害あって一利なし。秘密のファイルを守るどころか、遺族の邪魔にしかならないということだ。余計な疑惑を抱かせないためには、パスワードを遺族がわかる場所に書いておこう。

「何かあったら遺族が見る」と思えば、やるべきはファイルの仕分け。遺族に渡すべきファイルはわかりやすい場所に置き、旅行写真などは普段から共有しておけば、遺族がパソコンの奥まで探す危険も減りそうだ。クラウドサービスを活用して普段から渡すべきファイルを共有しておくのも手だ。

