デジタル遺品 ファイルのパスワードが家族混乱招く
デジタル遺品相続トラブル(上)
パソコンやスマートフォン(スマホ)のデータにクラウドサービスの契約など、ひと昔前には考えられなかった「デジタル遺品」がトラブルを巻き起こしている。デジタル終活をおろそかにした人の末路を見て、自分のデジタル遺産をどうすべきか考えていこう。パスワードはセキュリティーの面からも必要だが、「死」に際してはあらぬ疑惑を呼び、遺族の壁にもなる。
解除してもしなくてもパスワードはトラブルのもと
「ロックを掛けるなんて怪しい」と、解除を依頼したAさん。結果、妙なファイルはなく、残ったのは解除料金の請求書と、ほかの遺族からの抗議の声。遺品のロック解除はプライバシー侵害ではないが、相続人全員の同意が必要だ。
「家族の写真があるはず」とパソコンに詳しい知人にロックを外してもらったBさん。見つかったのが不倫旅行の写真では、泣くに泣けない。逆に「見られたくないのだから」とパソコンをそのまま廃棄したCさんの場合、パソコンから会社のファイルや個人情報が流出して大問題になってしまった。
つまり、デジタル終活において、遺品となるファイルにパスワードをかけることは百害あって一利なし。秘密のファイルを守るどころか、遺族の邪魔にしかならないということだ。余計な疑惑を抱かせないためには、パスワードを遺族がわかる場所に書いておこう。
「何かあったら遺族が見る」と思えば、やるべきはファイルの仕分け。遺族に渡すべきファイルはわかりやすい場所に置き、旅行写真などは普段から共有しておけば、遺族がパソコンの奥まで探す危険も減りそうだ。クラウドサービスを活用して普段から渡すべきファイルを共有しておくのも手だ。
「なかったことにしたい」ファイルは専用のソフトで自動消去する。「僕が死んだら…」は、デスクトップ上の「遺言」を開くと、指定したファイルが消去される。一定期間アクセスがないと自動消去する「死後の世界」も有効だが、入院時などに消去されないよう注意が必要だ。
遺品のロック解除で困ったら
一方、遺族として遺品のパソコンのパスワードをどうしても解除するときは、パスワードのレベルをしっかりと考えておきたい。例えばウィンドウズのログインパスワードがわからない場合なら、ある程度パソコンの知識があれば、ハードディスクを外して、ほかのパソコンに接続すればデータは読める。
身内だけでは太刀打ちできない場合は、専門の業者に依頼する必要がある。
ハードディスクのデータ復旧サービスなどを手掛ける「アドバンスデザイン」では、通常のデータ復旧サービスと同様に受け付けている。ただし故人のデータを悪用しようとする第三者の可能性もあるので、申し込み内容を詳細に調査するという。
デジタル遺品の処理に力を入れている会社もある。「デジタルデータソリューション」では、「写真が欲しい」「仕事のファイルがない」といった遺族の要望に対応して、デジタル機器を解析し、希望するデータを探してくれる。機器や状況によって成功率は変わるので、まずは無料診断から始めるとよいだろう。
(ライター 鈴木眞里子)
[日経PC21 2018年10月号掲載記事を再構成]
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