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屈折度の低下との関係が強力だったのは、15歳から18歳までの期間で、この期間に教育を受けていると、屈折度は直線的に低下していました。教育を受けている年数が1年延長するごとに、屈折異常は-0.25(D/年)進行していました。それ以降は、教育延長の影響は小さくなり、1年延長するごとの進行は-0.10(D/年)でした。この関係は、社会経済学的地位や、出生体重、母乳栄養の実施状況、出生地などを考慮して分析しても、ほぼ変化しませんでした。

(出典:BMJ 2018;361:k2022)

次に著者らは、より長く教育を受けることにより近視が起こるのかどうかについて検討することにしました。これには、因果関係の有無を調べる精度の高い方法の一つとして近年利用が増えている、メンデルランダム化解析を用いました。分析に加えたのは、欧州在住者の近視と学歴に関係する遺伝的素因です。近視の遺伝的素因については、近視と強力に関係していることを示した44の遺伝的多型を、教育期間が長いことに関係する遺伝的素因としては、69の遺伝的多型についての情報を分析に組み入れました。

その結果、教育期間は近視の進行に統計学的に意味のある影響を及ぼす一方で、近視は、教育期間延長には影響しないことが明らかになりました。したがって、教育期間の延長は、近視進行の原因になることが示されました。

今回の研究結果は、16歳で義務教育を終了した場合に比べ、その後も大学卒業まで教育を受け続けると、近視の度数が-1D以上進む可能性を示しました。このレベルの近視になると、運転時にメガネが必要になります。研究者たちは、「学業にいそしむ小児や若者の近視を予防する方法を考案する必要がある」と述べています。

論文は、2018年6月6日付の英国BMJ誌電子版に掲載されています[注1]

[注1] Mountjoy E, et al. BMJ. 2018 Jun 6;361:k2022. doi: 10.1136/bmj.k2022.

大西淳子
 医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

[日経Gooday2018年8月21日付記事を再構成]

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