「社内で相談しても報復が怖い」「どうせ上司の味方だろう」。そういう会社がないとは言いませんが、相談窓口が適切に機能しており、加害者(とされる人)と被害者双方から言い分を聞いたうえでパワハラが認められた場合には、加害者への注意(場合によれば懲戒処分)や配置転換などの処置がなされた例をいくつも見聞しています。
第三者によるあっせん制度
しかし、相談窓口を置く余裕のない中小企業も数多くあります。厚労省は9月から、大企業に比べて取り組みの遅れている中小企業のパワハラ対策の支援として、専門知識を持った社会保険労務士らを無料で派遣し、相談窓口の設置や社内規定の整備などを後押しするとの報道に接しました。
しかし、その対象は全国約100社であり、まだまだ十分ではありません。各都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」では、パワハラを含めいろいろな労働相談に乗ってくれて、解決に向けたアドバイスをしてくれます。また、会社が職場環境を改善しないようであれば、労働局長名で会社に対する助言・指導をする場合があります。
ただ、「助言・指導」はあなたとA課長とのトラブルに直接介入するわけではなく、社員が職場環境改善を会社に要望したが会社が何もしてくれないような場合が前提となります。それでも解決しない場合には、紛争調整委員会のあっせん制度の利用が考えられます(労働委員会にもあっせん制度があります)。
あっせんは、弁護士や大学教授などの学識経験者である第三者が公平・中立な立場で紛争当事者の間に入って調整を行い、話し合いを促すことにより円満な解決を図る制度です。ただし、これは当事者双方があっせんの利用に合意しなければ手続きが打ち切りとなります。そこまでやっても解決しなければ、労働審判や訴訟によることになります。
労災認定を受ける方法も
通常、パワハラは密室で行われることも多く、その場合は立証がなかなか難しいといわれていますが、相談のケースではA課長は他の社員もいる前で机をたたいて怒鳴っているのですから、A課長もその事実自体を否認することは難しいでしょう。
ただし、あなたが罹患(りかん)した不安障害やうつとパワハラとの因果関係は、必ず認められるものではありません。過去の判例をみると、損害賠償請求として裁判で争った場合、認められる賠償額には幅がありますが、状況に応じて数万円から百数十万円程度ではないかと思われます。また、労災認定を受ける方法もあります。
