机をたたきながら怒鳴る 「パワハラ」上司を訴えたい弁護士 志賀剛一

これら6類型はあくまでも例示で、パワハラに当たりうるすべてを網羅したものではありません。これ以外の行為でもパワハラに該当することは十分ありえます。

「逆パワハラ」も問題に

もっとも、どの職場でもミスをした者に対する注意や部下を育てるための指導は不可欠で、上司がパワハラを気にしすぎた結果、単純ミスやモラル低下がまん延して職場の規律が乱れてしまうのも困りものです。

最近では上司から部下への業務上必要な注意に対しても部下がパワハラをちらつかせ、業務を拒否したり、指示を無視したりする「逆パワハラ」も問題になっています。

パワハラと指導の線引きは実際にはかなり困難な場合もあります。円卓会議の提言には「個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワハラには当たらない」との記載もあり、「部下に対し繰り返し指導するも、その改善が見られない場合、ある程度の厳しい改善指導をすることは上司らのなすべき正当な業務の範囲内」であるという判例もあります。

「良好な職場環境」を維持する義務

さて、あなたの場合、机をたたきながら怒鳴りつけるA課長の行為は(2)の精神的攻撃や(4)の過大要求に該当するパワハラ行為といえるでしょう。たたくのが机だけなら(1)の身体的攻撃こそ当たらないものの、あなたの椅子を蹴るなどの行為があるならそれは暴行に該当します。

机をたたいて怒鳴るような「指導」に何の効果があるでしょうか。A課長の行為は明らかに指導の域を超えたパワハラと解されます。会社やA課長にどのような請求ができるでしょうか。

労働契約法は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする」と規定しています。要するに、会社は従業員が心身ともに安全に、安心して働ける良好な職場環境を維持する義務を負っているのです。

会社が職場内でのパワハラを認識しながら何ら対応をしなかったのであれば、会社に対し職場環境配慮義務違反に基づく損害賠償の請求ができる場合があります。あなたの場合はすでに疾病を発症されてますが、そうなる前に会社に対してA課長のパワハラを止めさせ、適切な職場環境を維持するよう求めることは難しかったでしょうか。規模の大きい企業では、社内に相談窓口を置いている場合があります。

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