マネー研究所

眠れぬ人の法律クリニック

机をたたきながら怒鳴る 「パワハラ」上司を訴えたい 弁護士 志賀剛一

2018/8/30

写真はイメージ=PIXTA
Case:39 「営業成績が芳しくない」と皆のいる前で毎日のように上司のA課長から机をたたきながら怒鳴られ、ついに出社できなくなりました。医師からは不安障害、うつの診断を受けています。会社やA課長に対し、何か請求できないでしょうか。

■労働局への相談件数、10年間で2.5倍

2017年度に全国の労働局に寄せられた職場でのいじめや嫌がらせ、いわゆる「パワーハラスメント」の相談件数は過去最多の約7万2000件で、この10年間で2.5倍に急増しているそうです。

パワハラについて法律に定義はありませんが、厚生労働省は「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」を開催し、12年3月に「職場のパワハラの予防・解決に向けた提言」をとりまとめ、定義や類型を取りまとめました。

それによると、パワハラとは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」と定義されています。上司から部下に対するものに限られず、職務上の地位や人間関係といった「職場内での優位性」を背景にする行為が該当します。

■どこまでが「業務の適正な範囲」か

もちろん、業務のうえで必要な指示や注意・指導であればパワハラに該当するわけではありません。「業務の適正な範囲」を超える行為がパワハラに該当するということですが、どこまでが「適正な範囲」であるのか境界線が問題になることがしばしばあります。

円卓会議では次の6類型をパワハラの典型例として整理しています。

(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)
(2)脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
(5)業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

昨今ニュースで報じられている、飲料の自動販売機事業大手の「公開処刑メール」が事実とすれば、(2)と(3)の組み合わせでしょうし、「有給休暇取得チャンスクイズ」が事実とすれば労働者の権利である有給休暇取得を不当に妨げる行為で、(4)に類するパワハラであると同時に労働基準法違反ともいえるでしょう。

マネー研究所 新着記事

ALL CHANNEL