宇宙を舞台にトップ営業 培った人脈で新たな「任務」
JAXA理事・宇宙飛行士 若田光一氏(下)
JAXA理事・宇宙飛行士の若田光一氏
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の理事で宇宙飛行士の若田光一さん(55)は「宇宙開発の流れが大きく変わってきた」と話す。国が主導してきた時代から、企業が存在感を示す時代へと移るなか、どのようにかじ取りをしていくのか。(前回の記事は「宇宙に『あうんの呼吸』ない 極限で磨いたリーダー力」)
「地球低軌道」を経済活動の場に
――国際宇宙ステーション(ISS)を率いたリーダーシップが理事でも求められますね。
「宇宙ステーション船長の時は、状況判断だけは間違えないようにしようと思っていました。リーダーがどう考えたのかを部下はずっと覚えていますからね。判断を誤ると、『こいつはリーダーとして適格か』となります」
「リーダーが外部の組織にどのような対応をするのかも部下はよくみています。宇宙ステーション滞在中は、地上の管制局にもはっきりとモノを言うようにしました。チームメンバーの前ではそれが重要です」
――ここ数年、宇宙開発の世界に変革が起きています。まさに状況判断が問われる局面ですね。
「有人宇宙開発の仕事をずっとしてきましたが、世界各国がここまで民間の参入を促す努力をするのは初めてです。日本も乗り遅れてはいけません」
「今の宇宙ステーションは日本や米国の政府機関などが税金で運用しています。世界の流れを受け、JAXAでも民間主体で事業をどう展開できるかを考えています。宇宙ステーションのある(地球近くの)地球低軌道を『経済活動の場』にするのが大きな目標です」
――最近は企業との交流も多いそうですね。海外の宇宙飛行士から、ビジネスマンのようだと言われませんか。
「そう言われるくらいにならないといけないですね。日本の宇宙産業は3000億円くらいの規模しかない。そこで、私たちの経験を活用してもらう機会を設けました。『宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)』と言います。JAXAには、いろいろな専門人材がいます。宇宙と関わりのなかった企業を含め産業界から色々なアイデアを出してもらい、共に事業をつくっていきます。『共創』です」
「先日も相談会であいさつをしました。参加者87人の半分くらいが、宇宙とは関係のない企業の方でした。たくさんの方が興味を持っていることが分かり、意を強くしました」