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ゾウがガンになりにくいのはなぜ? 理由の一つが判明

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/9/3

ナショナルジオグラフィック日本版

大きな体と長い寿命を持つにもかかわらず、ゾウがガンになる確率は驚くほど低い。研究者たちは、その理由を解明し、人間のガン治療に役立てたいと考えている(PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS)

ガンは多くの場合、細胞が新しいものに置き換わるときに、遺伝子のコピーに失敗することで起こる。ということは、細胞の数が多い大きな動物ほど、ガンになりやすいはずだが、ゾウはほとんどガンにならない。その謎を解く新たな手がかりを明らかにした論文が、2018年8月14付けの学術誌「Cell Reports」に掲載された。鍵となるのはゾウの進化の過程で復活を果たした「ゾンビ」遺伝子だという。

「進化生物学的に見て、とても魅力的な学説です。非常に幸先のよいスタートと言えるでしょう」と、米ユタ大学の小児腫瘍科医のジョシュア・シフマン氏は話す。同時に、発見を裏付けるためにはさらに検証が必要だとし、「まだ研究のとば口に立ったところです」とも述べている。なお、氏はこの研究には関与していない。

■医者のような役割の遺伝子

生物の大きさとガンになる確率が一致しない現象は、「ペトのパラドックス」と呼ばれている。2015年、シフマン氏の研究グループは、このパラドックスにまつわる重要な発見を発表した。彼らが突き止めたのは、ゾウにはガンを抑制するP53という遺伝子が多いということだった。人間の遺伝子には1組しか存在しないP53が、ゾウにはなんと20組も存在していた。

動物の細胞が分裂するとき、P53は遺伝子の良否を診断する医者のような役割を担う。この点は、人間でも、ゾウでも、他の動物でも変わらない。「P53はDNAが破損しているかどうかを見分け、どうするかを決めるのです」と話すのは、米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の生物学者、エイミー・ボディ氏だ。軽度な問題を抱えた細胞なら修復できるが、破損の度合いが大きい場合は、細胞がガン化するリスクがあるので、P53はその細胞を殺すよう命じるという。氏も同じく今回の研究には参加していない。

今回の論文の著者である米シカゴ大学の進化生物学者ビンセント・リンチ氏によれば、ほとんどの動物では細胞を修復する方法がとられるが、ゾウでは細胞を殺すケースが多いという。「ゾウの場合はとても奇妙なんです。細胞内のDNAを傷つけると、細胞がただ死んでしまいます」。そこでリンチ氏は、理由を突き止めたいと考えた。氏は並行してゾウのP53遺伝子を研究するチームも率いていた。

■傷ついた細胞を抹殺する殺し屋

リンチ氏のグループは、アフリカゾウ(Loxodonta africana)と小型哺乳類を対象に、他の遺伝子の違いについても調査を行った。特に注目したのは、複製が多い遺伝子だ。その結果、浮かび上がってきたのが、生殖能力を高める働きのある「LIF遺伝子」の1つ、LIF6だった。

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