数学を武器に女性がキャリアの裾野を広げつつある。理系の中でも、数学を専攻した後の進路は、研究者や教師の印象が強いが、実は高い専門性をいかした多彩な働き方がある。資格取得で、育児との両立や円滑な仕事復帰につなげる人も多い。子ども向け数学イベントに女子学生も参加、数学専攻の女性の交流も盛んになっている。
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数学知識で、仕事の選択肢を大きく広げる一人は、数学教室「和」の講師、佐々木和美さん(46)。3人の娘を持つ。子育てに専念しようと仕事を絞ったこともあったが、4年ほど前に今の仕事を始めた。資格や採用試験に向けて基礎的な数学を学ぶ大人や数学が得意な子どもを教え、専門書の校閲もこなす。
佐々木さんは「数学の魅力は定理などが変わらないところ。育児などで離れても身につけた技能は廃れない」と振り返る。教えた生徒が数学検定1級に合格するなど成果もあげた。「子どもの飛び抜けた才能の受け皿を作る」ことが目標だという。
富士通で働く小高伸子さん(46)は大学で数学を学び、コンピューターの世界に飛び込んだ。数学で培った論理的思考力をいかせると考えたからだ。「プログラミングなどの知識も身につければ、数学は色々な分野で応用が利く」と話す。
高校生の娘と息子の母親でもある小高さん。育休と短時間勤務を経て、現在は「デジタルアニーラ」と呼ぶ次世代コンピューター開発に取り組む。「数学で社会に貢献するという目標を実現できている」と胸を張る。
講師や会計士など多彩
知識をいかして専門資格を取得する女性もいる。住友生命の丸山かおりさん(30)は、確率や統計を駆使して保険料の算出などを手掛ける「アクチュアリー」を仕事に選んだ。数学などの専門知識を問う試験に合格すると、日本アクチュアリー会の正会員の資格が得られる。
専門性が高いこともあり「ワークライフバランスが良く、出産などを経ても復帰しやすい」と丸山さんは魅力を語る。現在は2歳半になる息子を育てながら、短時間勤務で働く。欧米ではアクチュアリーの3~4割が女性だが日本はまだ数%だという。丸山さんは「女性にこそもっと知ってほしい」と話す。
日本公認会計士協会会長の関根愛子さん(60)は「数学を学んだ人は公認会計士も視野に入れてほしい」と話す。企業の活動や資金の動きを分析するには統計知識が必須だ。関根会長も数学科出身。最初は別の仕事に就いたが、資格があれば男女の差なく活躍できるとの思いから公認会計士を目指したという。