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星空の下でボブ・ディラン フジロックに風は吹いた

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NIKKEI STYLE

フジロックフェスティバル'18はここ数年では最高ともいえる充実した内容のステージが続いた。ボブ・ディランにケンドリック・ラマーと新旧のスターがそろったのをはじめ、様々な国やジャンルの若手やベテランが個性的な演奏を聴かせた。

重宝したユーチューブ生中継

初日の7月27日は金曜日。早い時間帯に見ておきたいステージがある。日本の若手ロックデュオ、グリム・スパンキーだ。しかし、仕事の都合で出発が遅れる。彼らの出演時間はまだ新幹線の中である。そこで重宝したのが、今回から始まったユーチューブ公式チャンネルの生中継配信。新幹線に乗りながらタブレット端末でライブを堪能した。音質の良さは驚くほどだった。

27日夕方、渋めの人選で大人世代に人気のある小型ステージ、フィールド・オブ・ヘブンに駆けつけた。オーストラリアのソウルバンド、ザ・テスキー・ブラザーズの登場である。ジョシュ・テスキーが歌い始めた途端、ひっくり返りそうになった。「ぶったまげた」という表現がぴったりだ。ハスキーな高音でこれでもかというくらいに荒々しくシャウトする。とにかくすごい声だ。

弟のサム・テスキーのギターも実に渋い。ブルースだ。トランペット、トロンボーンを交えたバンドの音は次第に熱を帯び、リズム&ブルース、ソウルの色を強めていく。まるで1960年代の米国のサザンソウルである。ジョシュの声は当時のオーティス・レディングほどではないにせよ、エリック・クラプトンのボーカルをさらに頑健にしたような趣だ。これで20代というのだから恐れ入る。「ベストアクトはこれで決まりだな」と独りごちた。少なくとも、この時点ではそう思った。

夜の9時。フジロック最大の会場、グリーンステージに米国のN.E.R.Dの3人が現れた。人気音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムスを中心としたグループだ。少年の心を持ったいたずら好きの男たちがふざけて暴れ回るような遊び心たっぷりのステージだった。

夜10時半という遅い時間のスタートにもかかわらず、グリーンの次に大きなホワイトステージには多くの観客が集まった。注目の新星、ポスト・マローンが登場するからだ。最新アルバムは全米1位を3週続け、全18曲がチャートインという驚異的な記録を作っている。

筆者は個人的にはメロディアスな音楽が好きで、ヒップホップ、ラップは苦手の部類に入るのだが、彼のヒップホップはハイブリッド型で、ロックやカントリーまで取り込んでいるから親しみやすい。全米を席巻している最も旬な存在を目の当たりにしているという興奮からか、観客の盛り上がりはすさまじいものがあった。

ソウルフルな魅力、存分に発揮 トータス松本

2日目の28日、まずフィールド・オブ・ヘブンでランチョ・アパルテを見た。南米コロンビアのバンドだ。ドラム、太鼓、ユーフォニウムなどから繰り出される陽気なリズムに乗って、体格のいい男性ボーカルがノリノリで歌うのだが、メロディーはどこか物悲しい。2本のクラリネットの音色も哀愁を帯びていて、古き良きちんどん屋の奏でる「美しき天然」を思い出す。昭和の歌謡曲そっくりの曲もあって、不思議な気分になった。

手元のスマートフォン(スマホ)には台風12号で東京は土砂降りとのニュースが出ているが、フジロック会場はまだ快晴だ。

ホワイトとヘブンの間にあるジプシー・アヴァロンというステージに、ウルフルズのトータス松本が登場した。小さな会場は観客であふれかえり、筆者の陣取った位置からはトータスの姿は見えなくなった。

サム・クックの名曲に「どの街まで行けば 君に会えるだろう」と日本語の歌詞をつけた「ワンダフル・ワールド」や、ウルフルズのヒット曲「サムライソウル」「笑えれば」などを次々と弾き語りする。前日に見たオーストラリアのジョシュ・テスキーに対抗できるソウルフルな日本人ボーカリストは、やはりこの人だと思った。

夜7時、フィールド・オブ・ヘブンでカーラ・トーマスを待った。米メンフィス・ソウルの名門レーベル「スタックス」のヒットメーカーだったルーファス・トーマスの娘で、オーティス・レディングとも共演したメンフィスの歌姫だ。バックも黄金期のメンフィス・サウンドを支えたベテランに若手を加えた強力な布陣である。

まずカーラの実妹でシンガーとして活躍しているヴァニース・トーマスが登場し、すさまじい声で歌い始めた。この声の張り、ブルース感覚、バックのリズム隊の絶妙なグルーブ。テスキー・バンドにも「ぶったまげた」が、それをはるかに超えてしまった。やはり本場のレジェンドは格別だ。テスキー・バンドも素晴らしかったが、年季が違うというべきだろう。グルーブが違うのだ。

カーラ・トーマス、貫禄たっぷりのステージ

真打ちのカーラが登場した。ヒット曲「B-A-B-Y」を歌うと、会場は大喜び。ハスキーな声を自在に操り、貫禄たっぷりのステージを見せてくれた。60年代のメンフィスにタイムスリップしたかのようだった。ただ、筆者は妹のヴァニースの歌により魅力を感じた。カーラが衰えたとは言わないが、ヴァニースは現役バリバリのソウルシンガーのすごさを見せつけてくれた。

夜9時からケンドリック・ラマーを見た。台風12号がフジロックに最も影響を与えたのがこの時間から翌日未明にかけてだった。荒れ狂う暴風雨と巨大スクリーンの映像をバックに、ラマーはたった1人で広いグリーンステージを支配した。その存在感は圧倒的で、強い影響力を持つスターならではのオーラを放っていた。

最終日の29日。まずはグリーンステージで日本のバンド、サチモスを見た。2014年にフジロックの新人の登竜門「ルーキー・ア・ゴーゴー」に出て、16年にはホワイトステージに出演、ついに最大のグリーンステージにまで出世したわけだ。ボーカルのヨンスは葛飾北斎の赤富士をデザインしたアロハシャツ姿で熱唱する。海外のスターが数多く出演する中で、自分たちこそ今の日本代表だという自負がうかがえた。

一般の観客を巻き込んでいくため、フェスのステージではヒット曲を並べていくのが常とう手段だが、彼らは違った。「初めて演奏します」と前置きして、いきなり新曲を始めたり、ギターソロを延々と続けたりと、フェスの常識などお構いなしである。しかも、大ヒットした代表曲「ステイ・チューン」はやらなかった。自分たちが確かな演奏力を持つミュージシャン集団であることを証明しようとするかのような硬派なステージだった。

キューバのインタラクティーヴォを見た後、夕方近くにグリーンステージへ移動すると、米ハワイのオアフ島から来たジャック・ジョンソンのステージが始まっていた。雨も上がり、さわやかな風が吹いている。

次に登場するディラン目当ての観客がどんどん押し寄せる。ジョンソンにもそれは分かっている。偉大なディランと同じステージで、こんな大勢の皆さんの前で歌えるのはうれしい、ありがたいと語る謙虚な姿勢が、日本人の琴線に触れる。彼の人柄の良さがにじみ出た、実に気持ちのいいステージだった。

ボブ・ディラン、星空の下で熱演

ついにボブ・ディランの登場である。会場の巨大スクリーンには、終演までディランの姿がくっきりと映し出されていた。筆者は4年前のZeppダイバーシティ東京や2年前のオーチャードホール公演でディランを見ているが、いずれもステージは暗く、どんな顔をして歌っているのか分からなかったのだが、この夜はあまりにもはっきり見せてくれて、拍子抜けしたほどだ。

近年のステージと同様に、ディランがギターを持つことはなく、ひたすらピアノを弾きながら歌う。時に腰を浮かせて「ノリノリだぜ」といった調子で鍵盤をたたき、にやりと笑ったりもする。もっと難しい顔をして歌っているのかと思っていたら、そんなことはなかった。

雨はすっかりやみ、空には星が見え始め、ディランの演奏が進むにつれて、星の数はどんどん増えていった。東京で何日も続いた猛暑が嘘のように、さわやかな風が吹き渡る。そんな中で、おなじみの「風に吹かれて」が始まった。筆者は6年連続でフジロックの取材をしてきたが、その中でも忘れられない名場面の一つとなった。

個人的にベストアクトを挙げればカーラ・トーマス(本当に良かったのは妹のヴァニース・トーマス)、次点はザ・テスキー・ブラザーズだ。日本勢ではサチモスを挙げておきたい。多分に趣味が入っているのであしからず。7月27~29日、新潟県・苗場スキー場。

(編集委員 吉田俊宏)

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