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アルコール依存症の人は、自分が依存症と認めない

飲むべきか、飲まざるべきか、それが問題(上)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

お酒を飲む人にとって他人事ではないけれども実態はよく分からない「アルコール依存症」。少し前には、酔っ払って問題行動をとった某グループのメンバーが、アルコール依存症ではないかということが話題になりました。果たして、依存症にならずに健康的にお酒を飲むにはどうしたらいいのか。「元アル中」コラムニストで『上を向いてアルコール』の著者・小田嶋隆さん、酒ジャーナリストで『酒好き医師が教える最高の飲み方』の著者・葉石かおりさん、同書の監修者である肝臓専門医の浅部伸一さんが語り合います。

依存症は、何年断酒しても完治しない

葉石かおり(以下、葉石):浅部先生は肝臓が専門の医師ですが、ご自身も酒好きで、プロフィールには「好きな飲料はワイン、日本酒、ビール」と書かれています(笑)。そんな浅部先生に「アルコール依存症」という呼び方について、まずお伺いしたいと思います。これって、昔は「アルコール中毒」、通称「アル中」と言われることが多かったのではないでしょうか。

浅部伸一(以下、浅部):そうですね、中毒というのは、毒性のある物質で体に障害が起こったり、病気になったりすることを指します。だから今でも、アルコールを短時間にたくさん摂取した結果、倒れてしまったりするのは「急性アルコール中毒」と呼んでいます。

一方で依存症というのは、毒物そのものの害というよりも、ある物・ことをやめたくてもやめられない精神状態になることです。

小田嶋隆(以下、小田嶋):私もかつてアルコール依存症になり、その後20年にわたって断酒しているのですが、かつての主治医は、「アルコール依存症のほうが医学的には正しいけれど、その言い方は患者を甘やかすことになるから好まない」と言っていましたね。

「依存」というと「病気で苦しんでいるかわいそうな人」みたいなニュアンスが出てしまう。いや、病気なのは確かなのですが、それで本人が「病気だから飲んじゃうんだよね」と思っていたら絶対治らない。だからあえて、「アル中」と言っていたそうです。

葉石:厳しい先生ですね……!

小田嶋:その先生は、「アル中を克服する」という言い方も間違っていると言っていましたね。いったん依存症になった人は、何年酒をやめていようと、それは坂道の途中でボールが止まっているような状態なのだと。頭の中には「飲み出したらやめられない回路」がしっかり組み込まれているから、断酒後何年たっても、一度飲んでしまったら、ボールはごろごろと坂を転げ落ちていく、と言っていました。

「元アル中患者」は、1杯目を飲まないで我慢することはできるんですよ。でも、もし1杯目を飲んでしまったあとに2杯目を我慢することは、絶対にできません。

浅部:私の専門は肝臓病学で、肝臓を悪くして来る人の多くはアルコール依存症でした。彼らは「このまま飲み続けると死にますよ」と言っても、お酒を「やめます」とは言わない。「減らします」というんです。でも小田嶋さんの言う通り、むしろ減らすほうが難しいんですよね。

葉石:アルコール依存症の方は、自分が依存症だということを認めない、というお話を聞きました。「否認の病」である、と。

小田嶋:そうなんですよ。これって、性格が曲がっているから否認するとかそういうことじゃない(笑)。おそらく、アルコール依存症という病気のメカニズムのひとつなのだと思います。

私は30代になって自分の飲み方はやばいな、と思い始めたときがありました。例えば、飲みまくった次の日、知らない場所で目を覚ますことが増えるとか。起きたら身に覚えのないケガをしているとか。

葉石:うっ……、たまにありますね。

自分が依存症ではないという証拠を集めようとする

小田嶋:そういうことが続くと、自分の飲み方はやばいんじゃないかと思うわけです。でも、そこからさらに飲んでいると「俺は大丈夫だ、アル中じゃない」という自覚に変わるんですよね。不思議なことに。

(一同笑い)

小田嶋:ここまで来ると、症状が確定している状態ですよね。そして、どんどん自分がアルコール依存症ではない、という証拠を集め始めるんです。例えば「先週月曜日は飲まなかった」とか。火曜から日曜までは飲んでいるんですけど、「アル中だったら、毎日飲まずにいられないはずだ。1日飲んでいない俺は、アル中ではない」と考える。でもそれは、単に体調が悪くて飲めなかっただけなんですけど。

葉石:二日酔いがひどくて飲めない、ということですか?

小田嶋:いや、もう二日酔いどころじゃなくて、水も何も飲めない状態になるんです。何を口に入れても吐いてしまう。だから、点滴をうってもらうしかなくなるんです。私は1993年から95年くらいまでは、月に1~2回は点滴うちに病院に行っていましたね。でも、そんな状態でも「飲んでない日があるから大丈夫」って思うんです。

葉石:そこまでいっても、認めたくないんですね……。

小田嶋:もし、かつては「俺、飲みすぎてやばいよね」みたいに笑っていた人が、あるときから「俺はいつでも酒をやめられる」「全然飲みすぎてないから」なんて真面目な顔で言い出したら要注意ですよ。

葉石:それまでと、認識が変わってしまうのはこわいですね。

小田嶋:変なこだわりがでてきたりね。私は依存症だったころ、なぜかサントリーが嫌いだったんですよね。酒の会社のくせに、文化とか芸術に造詣が深いみたいな雰囲気を出しているのがしゃらくさい、と。今、考えると、完全に言いがかりで申し訳ないんですけど。

ただし、考え方や性格が全面的に変わるわけじゃないんですよ。そこが難しい。ちゃんとしているところは、ちゃんとしているんです。当時の私だって、それらしい原稿を書いていたわけですし。

飲んでいないときは、無気力でぱっとしない人間

葉石:完全に人が変わってしまうわけではないんですね。原稿は、酩酊状態で書いていたんですか?

小田嶋:酒は入っているけどまともな状態、というのがあるんですよ。当時は、酒が切れてひどく無気力で憂鬱な状態と、泥酔して使い物にならない状態の二極を、行ったり来たりしていました。その途中の段階は一応まともで、その間に原稿をやっつける。でもまともでいられる時間が、だんだん短くなってしまうんですよね。

ドラマなんかだと、アルコール依存症は酔っ払ってフラフラしているところばかり描かれますよね。でもむしろ、しらふの状態のときにどれだけ使えない人間か、というのが問題だと思います。私は、お酒が2、3日切れているときは、話しかけても、「ああ……別に。うん、もう少し小さな声でしゃべってくれない……(小声)」みたいな反応しかしないやつになっていました。

葉石:今の小田嶋さんからは想像できません。そんなふうになってしまうんですね。

浅部:酒が切れて無気力な状態から、少し飲むと調子が良くなるというのが、まさにアルコール依存症ですよね。つまりアルコールが存在していることが、脳のノーマルな状態になってしまっている、ということなのです。

葉石:そうなると、治療が必要ですよね。

小田嶋:私は結局、アルコール依存症の症状である不眠が出て、まったく眠れなくなってしまったんですよ。それにともなって幻覚・幻聴が出たから、心療内科に行きました。アルコール依存症だと自覚して、病院にかかったわけではなかったんです。

でもその病院で「今は困った酔っぱらい程度だけど、40歳で酒乱、50歳で人格障害、60歳になったらアルコール性脳萎縮で死にますよ」とはっきり言われました。そこで、自分がアルコール依存症であることを認め、治療に向かわざるを得なかったんですよね。

酒の味はどうでもいい。早く酔っぱらえるかどうかがすべて

葉石:私は日本酒が大好きで、お酒を飲むときはそのお酒の由来や原料、作り方なんかにも興味がわいて、人と話しながら飲むんですけど、アルコール依存症の方もやっぱりお酒への興味は強いんですか?

小田嶋:良い質問ですね。アルコール依存症患者は、むしろ逆です。私は大酒飲みだったころ、そういう酒のうんちくが一番嫌いでした。コクとかキレとか、豊かな味わいとか、酒飲むのにぐだぐだ能書きたれんじゃねえぞと。

(一同笑い)

小田嶋:酒を飲むときにいちばん重要な式は、「アルコール度数÷値段」。どれだけコストパフォーマンスがよいか、それだけです。

葉石:どれだけ安く酔っぱらえるか、なんですね(笑)。

小田嶋:アル中は酒がおいしいから飲んでるわけじゃないんですよね。飲むと、本来の自分に戻れたという安堵感が得られるから飲むんです。酒を飲んでいない状態というのは、そうだな、「スマホに頼り切りの現代人が、スマホをどこかに忘れてきた」みたいな状態なんですよ。そういうとき、半日とか1日ぶりにスマホにさわると、ほっとしますよね。

葉石:確かに。

小田嶋:それが、アル中が久しぶりに酒を飲んだときの1杯目の気持ちです。だから裏を返すと、飲んでいるときに「酒の味なんてどうでもいい」みたいなことを言い出すやつは、ちょっとやばいということです(笑)。

浅部:面白いですね。それは、アルコール依存症を判定するテストの項目に入れたらいいかもしれない(笑)。

中に続く

(文 崎谷実穂、写真 鈴木愛子)

[日経Gooday2018年6月25日付記事を再構成

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