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アルコール依存症の人は、自分が依存症と認めない 飲むべきか、飲まざるべきか、それが問題(上)

日経Gooday

2018/9/10

写真はイメージ=(c)Katarzyna BiaA asiewicz-123RF
日経Gooday(グッデイ)

 お酒を飲む人にとって他人事ではないけれども実態はよく分からない「アルコール依存症」。少し前には、酔っ払って問題行動をとった某グループのメンバーが、アルコール依存症ではないかということが話題になりました。果たして、依存症にならずに健康的にお酒を飲むにはどうしたらいいのか。「元アル中」コラムニストで『上を向いてアルコール』の著者・小田嶋隆さん、酒ジャーナリストで『酒好き医師が教える最高の飲み方』の著者・葉石かおりさん、同書の監修者である肝臓専門医の浅部伸一さんが語り合います。

■依存症は、何年断酒しても完治しない

葉石かおり(以下、葉石):浅部先生は肝臓が専門の医師ですが、ご自身も酒好きで、プロフィールには「好きな飲料はワイン、日本酒、ビール」と書かれています(笑)。そんな浅部先生に「アルコール依存症」という呼び方について、まずお伺いしたいと思います。これって、昔は「アルコール中毒」、通称「アル中」と言われることが多かったのではないでしょうか。

浅部伸一(以下、浅部):そうですね、中毒というのは、毒性のある物質で体に障害が起こったり、病気になったりすることを指します。だから今でも、アルコールを短時間にたくさん摂取した結果、倒れてしまったりするのは「急性アルコール中毒」と呼んでいます。

 一方で依存症というのは、毒物そのものの害というよりも、ある物・ことをやめたくてもやめられない精神状態になることです。

小田嶋隆 1956年生まれ。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著は『上を向いてアルコール』

小田嶋隆(以下、小田嶋):私もかつてアルコール依存症になり、その後20年にわたって断酒しているのですが、かつての主治医は、「アルコール依存症のほうが医学的には正しいけれど、その言い方は患者を甘やかすことになるから好まない」と言っていましたね。

 「依存」というと「病気で苦しんでいるかわいそうな人」みたいなニュアンスが出てしまう。いや、病気なのは確かなのですが、それで本人が「病気だから飲んじゃうんだよね」と思っていたら絶対治らない。だからあえて、「アル中」と言っていたそうです。

葉石:厳しい先生ですね……!

小田嶋:その先生は、「アル中を克服する」という言い方も間違っていると言っていましたね。いったん依存症になった人は、何年酒をやめていようと、それは坂道の途中でボールが止まっているような状態なのだと。頭の中には「飲み出したらやめられない回路」がしっかり組み込まれているから、断酒後何年たっても、一度飲んでしまったら、ボールはごろごろと坂を転げ落ちていく、と言っていました。

 「元アル中患者」は、1杯目を飲まないで我慢することはできるんですよ。でも、もし1杯目を飲んでしまったあとに2杯目を我慢することは、絶対にできません。

浅部:私の専門は肝臓病学で、肝臓を悪くして来る人の多くはアルコール依存症でした。彼らは「このまま飲み続けると死にますよ」と言っても、お酒を「やめます」とは言わない。「減らします」というんです。でも小田嶋さんの言う通り、むしろ減らすほうが難しいんですよね。

葉石:アルコール依存症の方は、自分が依存症だということを認めない、というお話を聞きました。「否認の病」である、と。

葉石かおり 1966年生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経てエッセイスト・酒ジャーナリストに。全国の日本酒蔵、本格焼酎・泡盛蔵を巡り、各メディアにコラム、コメントを寄せる。2015年に一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。

小田嶋:そうなんですよ。これって、性格が曲がっているから否認するとかそういうことじゃない(笑)。おそらく、アルコール依存症という病気のメカニズムのひとつなのだと思います。

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