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歌は仕事、食べることは戦い 高橋真梨子さん

食の履歴書

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NIKKEI STYLE

湯気に包まれた色鮮やかな蒸し野菜。夫がつくる朝食の定番だ。好みのたれで季節を味わう。もともとやせ形で食が細い。少しでも食が進めば、との夫の心がこもる。活力なしではステージに立てない。歌い続けられない。高橋真梨子さんにとって「食事は戦い」だ。

コンサートツアー中心の生活を40年以上続けてきた。1回に2時間以上、平均二十数曲を歌うステージは著しく体力を消耗する。健康管理には人一倍気を使っていたが、50歳手前の頃から目まいやほてり、倦怠(けんたい)感を覚えるようになった。「食事も水ものどを通らない」。医師は更年期と診断した。つらかったが、「歌うことは仕事。主役はお客さん。感動し楽しんでもらうために自分は苦しむ」と決めた。

食欲なくても野菜なら

彼女の「我慢」をいち早く感じ取ったのは、夫で音楽プロデューサーのヘンリー広瀬さん。頑固で不器用な妻には「大丈夫なの」とか「頑張れ」とは言わず、ただ寄り添った。食欲がなくても野菜なら食べられる。蒸し野菜なら栄養価も高い。ニンジン、タマネギ、ブロッコリー、プチトマト。「ポン酢やごまだれ、レモン、岩塩。味付けも飽きなくておいしいのよ」

野菜本来のうまみや歯応えを残すため、切り方や大きさ、蒸し時間を素材ごとに調整する。ニンジンとトマトは年中欠かさない。「春先にはキャベツやオクラ、秋にはキノコ類など、季節を感じる食材も加える」とヘンリーさんは言う。工夫を重ねるうち、量はさほどではないにせよ、肉料理や油ものにも次第に手が伸びるようになった。

広島で生まれ、すぐ博多に移った。ジャズバンドのサックス奏者だった父の影響もあり、14歳で歌を学び始めた。先生は父のバンドのピアニスト。ハリー・ベラフォンテ、ペギー・リー、ドリス・デイ――。地元には米軍キャンプもあり、スタンダードジャズは身近だった。

東京で食べたラーメンに幻滅

学校には内緒で中洲のナイトクラブで歌い始めた。客があまり入らない時間帯だったが、とても緊張したのを覚えている。歌を聴いたある大物歌手からスカウトされたのもこの頃だ。

ほどなく大手芸能事務所の関係者から声がかかり、上京した。16歳だった。

東京で初めて口にした食事は、事務所の担当者がごちそうしてくれたラーメン。「うわっ、まずい」。豚骨ラーメンの本場で育った彼女の舌には、至極当然の反応だった。なじめそうにない東京の食環境が不安をあおった。

バックダンサー・コーラスグループ「スクールメイツ」で早々のテレビ出演を果たすが、感じたのはむしろむなしさ。「自分の望みは歌手になること。アイドルではない」

20歳を前に故郷へ戻り、再び歌い始めると「ペドロ&カプリシャス」のボーカルに誘われた。合縁奇縁だったのだろう。出会ったのがメンバーでフルート奏者のヘンリーさんだ。1973年にデビュー。その後ソロに転じたが、バンドで歌うスタイルは貫くと決めていた。ヘンリーさんがバックバンドのリーダーとして支える。93年には結婚、公私共にパートナーとなった。

ライブ前に食べる「チョコパイ」

ツアー中に必ず食べるものがある。ロッテの「チョコパイ」だ。験担ぎではないが、ステージ前のチョコパイは欠かさない。クリームをはさんだ円盤形のスポンジケーキをチョコレートでコーティングした菓子で、腹持ちもよく、体力維持にはちょうどよい。本当はもっとしっかりしたもの食べなきゃ、とは分かっている。でも「無理はせず、好きなものを口にする」。

デビュー45周年。運の悪さを憎んだこともあったし、失敗もした。「でも、歌い続けている」。人生の轍(わだち)が、生来の才能に熟成を促す。

阿木燿子さん作詞のヒット曲「はがゆい唇」は女性の官能を詠(うた)った曲だが、色気に品を備えた歌声はいやらしく聞こえない。歌詞は曲の個性を決めるからと気持ちを込め過ぎるのではなく、むしろ淡々と歌うからだ。6月に発売したアルバムのタイトルは、"浄化"を意味する「Katharsis」(カタルシス)。11曲中、9曲を自ら作詞した。一番の理解者であるヘンリーさんなしに選曲はまとまらなかっただろう。

夕食前、チーズとスライストマトを肴(さかな)にシャンパン1杯を夫婦でゆっくりと楽しみ、1日を締めくくる。「仕事ではぶつかり合うけれど、夫としては言うことを聞いてばかりだよね」とほほ笑むヘンリーさんを見つめ返す。"婦唱夫随"の関係も、歌を仕事と言い切る強さにつながっている。

こぼれる肉汁 スペアリブ

東京・紀尾井町の「トレーダーヴィックス東京」(電話03・3265・4707)がお気に入りだ。体調が回復した今、夫のヘンリーさんと多い時は週2、3回足を運ぶ。必ず頼む1品が「BBQポークスペアリブ」(3本2100円~)だ。

サクラの薪(まき)をくべた専用窯に骨付き肉をつるし、2時間蒸し焼きにする。うまみがとじ込められ、余分な油も落ちる。薫製のような香りも食欲をそそる。調理法、味付けは米サンフランシスコ本店と全く変わらない。「窯の構造とソースレシピは門外不出」(カリム・ベルグナウィ総支配人)。

ソースで琥珀(こはく)色に染まった表面と切り口からこぼれる肉汁を見ると「あぁ、これが肉料理だって感じる」。ソースもくせになる。「いつ食べてもいいようにデンタルフロスは必需品ね」

最後の晩餐

たっぷりとバターを乗せた焼きたてのトースト。シンプルだけど譲れないこだわりもあります。焼きムラがなく焦げ目がつくかつかないかのきつね色で、バターはフランス産発酵バター「エシレ」を贅沢(ぜいたく)に。それと、ヘンリーさんに焼いてもらえたら言うことなしね。

(佐々木聖)

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