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スコッチを追いかけた日本ウイスキー その思いとは

世界5大ウイスキーの一角・ジャパニーズ(23)

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NIKKEI STYLE

これまで、なぜ日本でスコッチタイプのウイスキーをつくるようになったのか、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンと、日本のウイスキーづくりでは何がどう違うのか、ということを見てきた。

スコッチウイスキーと日本の関係は、まだ続く。

ウイスキー世界ランキングや各種コンペティションで、スコッチウイスキー以外が最高賞に選ばれることが続いて久しい。日本ウイスキーはその常連だ。だが、最近はスコッチウイスキー業界も品質向上のため研究開発に取り組む動きが出ている。

サントリーは1968年以降、スコットランドの大学や研究所に20人近い社員を留学させており、筆者もその1人だ。我々はスコッチウイスキー業界に技術開発上の様々な提案をしてきたが近年、それに対するリアクションが起きるようになった。

例えば、スモーキーフレーバーの源、麦芽乾燥時に焚(た)くピートについての研究。

ピートについては実は本が何冊も書けるほどの情報がある。そのピートがいぶされて発生する薫煙がもたらすスモーキーフレーバーは樽(たる)熟成によっても大きく変化し、新たな味わいが生まれてくるチャンスも多い。我々がそのスモーキーの源、ピートに関する研究をスコットランドで始めたのは2000年であった。その後スコッチ業界がピートの寄与を再認識するようになった。最近では単にスモーキーの強烈さを競うのではなく、ピートの採掘地や組成、ピートが出すスモーキーのタイプなどの踏み込んだ情報を提供する動きが広がっている。

ウイスキーの香味は様々な因子や成分が絡み合った複雑系である。ピート以外にもウイスキーの香味に関する切り口がたくさんある。

ウイスキーの特性をもっと深く知り、味わう上で、我々は今、日本で願ってもない状況に遭遇している。クラフト蒸留所をはじめとする生産現場で、品質への活発なチャレンジが広がってきたのだ。

麦芽用大麦での国産品種の使用、麦汁の採り方の変更、酵母の多様化、独自の発酵パターン、蒸留での様々なトライアル。樽材の樹種、前歴、貯蔵環境などの条件の違いなど……。

それら様々な条件でつくったウイスキーを試飲する機会が増えてきた。どんな味わいがウイスキーにもたらされるか、飲み手もつくり手と同じ視座で経験できるようになった。

日本人の特質の1つに「しつこさ」がある。悪く言えば「諦めの悪さ」だ。信じられないほどの難しさにも、血の涙を流しながら乗り越えていく。そんなパワーを持った若手のウイスキー技術者が日本で増えている。彼らが情熱を傾けてつむぎ出すウイスキーは日本ウイスキーの味わいを、また一歩深めていくだろう。

この複雑系のウイスキー製造工程で真の関係性を捕まえ、工程を自分のものにするためにはひたすら回数を稼がねばならない。するとある日、見えてくるのだ。湧いてくるといった方が良いかもしれない。この条件がこの香りの引き金になっている!頭で考えて出た結論ではない、言葉を介さない直感だ。

スコットランドが産業革命の旗手となったきっかけは、製鉄業の熱風溶解法という鉄鉱石の溶解方法を発明したこととされる。吹き込む空気の温度を上げることで高炉内の燃焼温度を劇的に上げ、質の悪さで捨てられていたスコットランド産の黒帯鉄鉱石から廉価な銑鉄を生産することが可能になった。グラスゴー生まれのジェームズ・ボーモント・ニールソンが1828年にこの方法を発明したと言われている。鉄がふんだんに使えるようになって、グラスゴーでは造船、鉄道、機械など重工業が発展した。それらの技術は日本に移入され、日本のお家芸となる。石油精製もスコットランドが発祥の地である。

近代工業を追っていくと、日常生活の中の多くのものがスコットランドと関係していることに驚く。それらスコットランドで生まれた技術や製品の情報は、今日ではインターネットで簡単に探すことができるし、翻訳ソフトを使えば辞書なしで読める。スコットランドには日本が必要とした技術が山盛りにあり、日本はそれを学び取っていった。

そのスコットランドがなぜ今、かつての輝きを失ったように見えるのだろうか。

産業革命をけん引したスコットランド人だが、その後ものづくりから金融やマーケティングで働く人が増えたことが関係しているのかもしれない。しかし、「もの」を「つくりあげること」の中に秘められた多くの宝物と遭遇する喜びは人間の本性だ。ものをつくることが好きというスコットランド人の性格は変化していないはずだ。スコットランドにはまだまだ様々な強みがあると信じている。

ジャパニーズウイスキーは5大ウイスキーの中で一番遅れて生まれたのだから、一番つくりがやさしいウイスキーを選べたはずだ。それが、スコッチウイスキーに範を取ったのは、実は深謀遠慮があったからかもしれない。「つくりあげる」過程の困難さは、学ばなければいけないことが多いということだ。学べることが多いことは面白さの奥が深いということだ。それは、「飲む」過程でも気付きが多いということでもあり、飲む楽しさがたくさん詰まっているということ。飲み手も「つくり」に参加して、色々な気付きを得ることができるということにほかならない。

明治維新から今年は150年。日本産ウイスキーを飲みながら当時からの日本のたどった道筋を振り返り、確認し、現在と将来を考えてみると様々なアイデアが湧いてくるだろう。

その時、傍らにボトルを置いてグラスに注いでほしいウイスキーを紹介したい。

「サントリーウイスキー響 JAPANESE HARMONY」

響シリーズはサントリー創業90周年を記念して1989年に発売された。「響21年」は権威のあるコンペティションでブレンデッドウイスキーの世界最高賞を受賞している。しかも、昨年まで4年連続で。

2015年3月発売の「響JAPANESE HARMONY」は、チーフブレンダー福與伸二の手によるブレンドである。開発してきた原酒を高度な技でブレンドしたこのウイスキーは、進化してきたサントリーウイスキーの到達点を味わうのに最適のブレンドではないかと思う。

モルトウイスキーより熟成が早いグレーンウイスキー、そのグレーン原酒の持つはつらつさ、華やかさがうまく生かされている。ブレンドに選ばれたグレーン原酒はカスタードクリームやバニラアイスのようなまろやかさ、マスカットなどのみずみずしいフルーティーさ、そして香ばしい穀物感があり複雑なフレーバーと長い余韻を持つ。このグレーン原酒に合わせるモルト原酒にはハチミツ様の濃厚さ、紅茶の心地良いタンニン、モルティー、ウッディー、ナッツの香りなどがある。

グレーンがモルトを、モルトがグレーンを揺り動かすことで、次々とさざ波が起き、共鳴し、響き渡る。

それらの特徴ある香味は一体となって香り立つ。また、交響曲の中で各楽器がそれぞれの音色を響かせ、全体の繊細さを高めるように、個々の響を奏でている。

私は「響JAPANESE HARMONY」に、ブラームス第4番第1楽章をイメージしてしまう。または、メンデルスゾーンの第4番第1楽章を聴きながら飲んでもよい。

皆さんはいかがだろうか。

飲み方は、ロックか濃いめの水割りをオススメしたい。

今回で連載は終了します。長い間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。

(サントリースピリッツ社専任シニアスペシャリスト=ウイスキー 三鍋昌春)

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