――買収時は帽子の製造個数も減少していました。需要の伸びが期待できますか。
「60年前には年200万個を製造していましたが、16年の製造個数は年15万個まで減少しています。その衰退ぶりが目に付きますが、私には多大なポテンシャルを持つブランドだと映りました。これだけ名が知られているのに市場シェアが低い。まさに『スリーピングビューティー(眠れる美女)』だと直感し、投資に乗り出したのです」
■帽子は伸びしろが大きい
――帽子はまだ、市場の開拓余地が大きいとみているのですか。
「そうです。アパレル、バッグなどの皮革製品はもはや飽和状態です。一方で帽子は伸びしろが大きいと感じています。帽子には日よけや防寒といった機能を求めて買われてきた歴史がありますが、いまはファッションステータスです。機能性からファッションアイテムへと移行している点は、かつてのバッグと同じです。アクセサリーとしての帽子は成長の余地が大きいはずです」
――160年の歴史があり、顧客には著名人が多いです。
「政治家にビジネス界、映画界と、ラッキーなことに4世代にわたってファンがいます。米国ならハンフリー・ボガート、ロバート・レッドフォード、ジョニー・デップ、ファレル・ウィリアムスといった具合にです。欧州ではアラン・ドロン、日本では麻生太郎ら各氏がイメージアップに貢献してくれています」
――圧倒的に男性顧客が多いというイメージです。
「買収したときの男女の構成比は8対2でした。いま、女性が32%まで上がってきています。20年には5対5まで引き上げます。これまではクラシックで男性的な帽子が中心でしたが、女性用、1980年代以降に生まれたミレニアル世代向けの商品を増やします。ミレニアルズ向けでは色、素材、シェイプなどで新しいものに挑戦します。すでにストローハットの動きはいいのですが、フェルトの帽子を定着させるのはこれからです」