快作ホンダN-VAN N-BOXの代わりにはなりません

日経トレンディネット

助手席を畳んだ最大スペース長は2635mm(「G」「L」「+ STYLE FUN」)

加えて助手席を倒すと全長2.6mチョイの長尺ものが置け、これはキャブオーバーにない収納性。もっとも2.7mを超えるサーフィン用のロングボードは難しいようですが。

そのほかクラストップの1945mmのハイルーフボディーの全高は圧巻で、全8カ所に用意されたタイダウンフックや28カ所用意されたユーティリティーナットを使えば、使い勝手はものすごそう。オフロードバイクなどは楽勝で入っちゃうようです。床も低くて使いやすそうだし。

写真左のタイダウンフックにはタイダウンベルトやひもなどをかけて、大きな荷物や自転車などを固定できる。右のユーティリティーナットはM6サイズのネジ穴として使用できるので、パイプや棚、金具などが取り付けられる(写真提供:ホンダ)

従来の軽バンとは安定感が違う走り

一方、気になる走りですが、確かにアクティ・バンのようなバタバタ感やステアリングのふらつき、後ろから響いてくるエンジン音はありません。ただしこれまたN-BOX同等と思ったら大間違い。やはり商用だけのことはあります。

一番の違いは貨物用タイヤと足回りの硬さとボディーの補強具合。商用バンだけに最大で貨物350kg+大人2人の積載が予想され、ざっくり+500kgを想定。よってボディーは今回の助手席ピラーレス構造もあって、左右フレームやリアフロアが強化され、車重は最も軽いもので930kg。

足回りも大幅強化され、タイヤも軽トラと同じ車重1.5トン台を想定した軽貨物専用タイプ。おかげで走り出すなりロードノイズはシャーとそれなりで、特に石畳の路面では軽乗用車より明らかにうるさいです。

一般道でも乗り心地は明らかに硬めで継ぎ目でドタンバタンとフロアに響きます。エンジン音もN-BOXよりはうるさめでやはりレベルが違います。

エンジンは53psの660ccノンターボと64psの660ccターボ
6速MTも軽くシャープにシフトが決まる

とはいえさすがは安定感と乗り心地に優れたFFプラットフォーム。ステアリングを切った方向にビシッとクルマが向かうし、セミキャブオーバーの軽バンとは安定感が違います。今回は試せませんでしたが、高速の横風なんかにも強そうです。

エンジンはラジエーターサイズや排ガス浄化の触媒性能を高めた53psの660ccノンターボと64psの660ccターボ。どちらもN-BOX用がベースで、ギアボックスも商用車向けに強化したCVT。もちろん空荷では十分に走り、特にターボは速すぎるレベル。他社にはないサクサク操作感の6速MTも選べて、確かにホンダらしく楽しい。

とはいえ軽商用バンの本義は、荷物フル積載でどれだけ走れるか。パワー自慢のホンダの軽だけに悪くはないはずですが、本当のところは実際にプロ目線で使ってみないと分からないでしょう。

ホンダセンシングは全タイプに標準装備

さらなる自慢は今や商用にも欲しくなってきた先進安全運転支援システムのホンダセンシング。乗用域の時速約5km以上で速度差が時速約5km以上あるときに利く衝突軽減ブレーキ(CMBS)はもちろん、歩行者事故低減ステアリング、路外逸脱抑制機能、先行車発進お知らせ機能など全10機能が付いているのは確かに安心。

「フルLEDヘッドライト」など「ホンダセンシング」全10機能を搭載
商用車には長く乗ってみないと分からない「耐久性」の壁がある

というわけで荷室の絶対的長さを捨て、自慢の乗用FFプラットフォームのメリットを生かして作り込んだ軽商用バンの意欲作、N-VAN。

すでに乗用スーパハイトワゴンをベースにした商用車は「ウェイク」をベースに、ダイハツが作り込んだ「ハイゼットキャディー」がありますが、あちらは2シーターに割り切り、最大積載量も200kg。より思い切って全面的にFF化してきたのはN-VANです。

他にない個性を追求するホンダらしさであり、意欲を久々に感じましたが、かといって簡単に王者エブリイ、ハイゼット カーゴの客が奪えるかというと未知数。

なぜなら商用車には買ってすぐ分かるスペース性能、使い勝手、走り以上に「耐久性」という地味で長く乗ってみないと分からない壁がそびえているからです。

これらは実際、ほとんどをプロの大工や作業員さんが使います。特に大型トラックやトヨタ「ハイエース」などが入れない狭い工事現場などでは、この手が重用。最低でも重い荷物を積んで10万km以上壊れずに走れなければいけなかったりします。

確かに軽商用バンにはない走りやカッコ良さを備えたうえ、長尺ものを載せやすくしたピラーレス構造や全面フルフラット構造もユニーク。

しかし、イメージほどにはN-BOXの代わりにはなりませんし、本当の決着が分かるのはまさにこれからなのかもしれません。

小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、『ベストカー』『時計Begin』『MonoMax』『夕刊フジ』『週刊プレイボーイ』、不定期で『carview!』『VividCar』などに寄稿。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。

[日経トレンディネット 2018年8月1日付の記事を再構成]

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