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五輪中はネット通販自粛? 幹線道路欠き大渋滞の危機 東京都、環状2号の完成を22年度に先送り

2018/9/5 日本経済新聞 朝刊

五輪の会期中にあたる8月上旬は、首都高が一年で最も混む時期だ(写真はイメージ)=PIXTA

五輪道路が消えた――。東京都は都心と五輪施設が集まる臨海部を結ぶ幹線道路「環状2号」の完成を2022年度に先送りした。五輪の輸送ルートは前回の東京五輪の「遺産」ともいえる首都高速道路をフル活用する方針だが、渋滞対策は重くのしかかかる。苦肉の策として消費者に身近なネット通販を自粛してもらう検討も始めた。

五輪誘致では選手や観客のスムーズな移動をアピールしたが…(写真は選手村を建設する晴海地区)

「大会期間中、何もしないと首都高はいまの2倍の渋滞が発生する」。都と大会組織委員会は危機感を隠さない。理由のひとつは環2の全線開通の延期だ。輸送ルートの大動脈になるはずだったが、小池百合子知事が決めた築地市場の豊洲への移転延期で工事が間に合わなくなった。

大会中にあたる8月上旬、お盆前は首都高が一年で最も混む時期だ。1日の通行量は110万台超。大会中は1万8千人の関係者が6千台の車両で約40カ所の競技会場を行き交う。首都高などの通行量は1日約5万台分上乗せされる見込みだ。

「環2の地下トンネルがないのは痛い」。都幹部は率直だ。戦後間もなく計画され「マッカーサー道路」の異名も持つ環2。当初の想定では臨海部の晴海にある五輪選手村と新国立競技場(東京・新宿)を結ぶ基幹ルートだったが、ルート上にある築地市場の移転が遅れたため跡地に建設する地下トンネルの完成は22年度にずれ込む。1日6万台をさばける目算だったが、肝心の五輪前に開通するのは間に合わせの地上部道路だけ。輸送能力は3分の1に減る。

都は当初計画した環2の本格活用を断念。輸送ルートを首都高中心に切り替えることを決めた。1964年の前回大会から半世紀を超えたいま、東京五輪は老朽化が進む首都高に再び大会輸送を頼ることになる。

■国際公約に違反との声も

五輪誘致に乗り出した都は競技会場を集約する「コンパクト五輪」を標榜。選手や観客の移動がスムーズな大会運営を国際オリンピック委員会(IOC)にアピールし他の候補地から招致をもぎ取った。環2の整備はこの計画の根幹だった。

例えば立候補ファイルでは選手村から新国立競技場までは環2で10分。だが首都高を使うと選手村から迂回してレインボーブリッジ経由で新国立に近い外苑ランプに至るルートの所要時間は2倍に膨らむ。このため環2の完成延期は「国際公約違反」との声も出る。

「秋には混雑マップを示します。企業の皆様には混雑回避の準備をお願いしたい」。都庁で8月8日に開いた五輪の交通対策プロジェクトの初会合。国や経済団体の代表者らを一堂に集めた席で小池知事は協力を呼びかけた。都は大会中、道路交通量を平日より15%少ない休日並みにする方針だ。

その影響は企業活動や消費者の生活にも波紋を広げそうだ。都は交通量の削減へネット通販の制限まで考えている。

「大会中は不要不急の買い物を自粛してもらわないといけなくなる」(都幹部)。都は渋滞回避に必死だ。広がり続けるネット通販。都内を走り回る運送会社のトラックは日増しに増える。首都高の混雑回避には全体の2割を占める業務用車両、特にトラックの通行量の削減が欠かせない。

組織委は8月11日の神宮外苑花火大会にあわせ、新国立に近いJR千駄ケ谷駅周辺の約2千世帯にアンケート調査した。「再配達をしない工夫はできますか」といったネット通販の利用状況のデータを集めた。効果は未知数だが「やれることなら何でも」という姿勢だ。

都と組織委は今後、運送会社や荷主と配送時間やルートの変更に取り組む。16年リオデジャネイロ五輪では高速道路が渋滞、交通がまひする映像が世界に流れた。五輪道路を完成させられずに迎える東京五輪は二の舞いにならずに済むか。準備に費やせる時間は2年もない。

(安部大至)

[日本経済新聞朝刊2018年8月22日付]

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