ジョエル・ロブション氏 最近では、日本酒「獺祭(だっさい)」の旭酒造とコラボしたレストランをパリにオープンさせた

1976年、31歳でMOF(フランス国家最優秀職人章)を取得するなど、料理面での力は早くから認められていたが、もう一つ、経営者としての力を評価しておかなければならない。

■若くして組織のリーダー、経営者としての手腕を発揮

29歳でパリの「ホテル・コンコルド・ラファイエット」の開業に参画、多数の料理人のリーダーとして、その配置や仕事の組み立て方などで発揮した手腕を買われ、78年には「ホテル・ニッコー・ド・パリ」のレストラン部長となった。料理の腕はもちろん、組織のリーダーとしての才能を買われたものだ。

81年には自分のレストラン「ジャマン」を開業、84年には史上最短で「ミシュラン」の3つ星を獲得した。その後94年には、フランス外で初の店となる「タイユヴァン・ロブション」を、東京・恵比寿で開業した。

サッポロビールが恵比寿工場の跡地に作った「恵比寿ガーデンプレイス」の目玉として誘致したもので、フランス料理店の名経営者として知られるジャン・クロード・ヴリナ氏の「タイユヴァン」と、ロブション氏率いる「ジャマン」を融合させたシャトーレストラン。しかも両店ともに「ミシュラン」の三つ星レストランだったため、「世界初の六つ星レストラン」と、世界的にも話題を呼んだ。

ヴリナ氏とロブション氏が同席する場に居合わせたことがあるが、非常に仲が良く、ロブション氏が経営者としてのヴリナ氏を尊敬しているのに対し、ヴリナ氏はロブション氏の料理の腕はもちろんのこと、経営感覚、先見性といったことを高く評価していたことを覚えている。傍で見ていて、非常に温かい光景だった。