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日本酒、純米の酸味・うま味で勝負 大吟醸人気に変化

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「プレゼントなら純米大吟醸かな」――。日本酒選びの際に多くの人が目安としてきたのが「吟醸」や「大吟醸」といった瓶のラベルにある表示だろう。製造方法など一定の要件を満たすと表示でき、こうした清酒を「特定名称酒」と呼ぶ。ところが味の評価をめぐって最近は新たな変化が出てきた。吟醸や大吟醸という名称だけに頼らず、味わいで勝負しようとする酒蔵が続々と登場している。

パリの衝撃 「Kura Master」

7月、パリで開いた日本酒の品評会「Kura Master」の授賞式で、どよめきが起こった。出品された650本のうち、最優秀のプレジデント賞に輝いたのは「ちえびじん 純米酒」。日本で評価されやすい純米吟醸や純米大吟醸でなく、純米酒が最高の1本を勝ち取ったからだ。審査員は、最高級の格付けの5つ星ホテル、現地の著名レストランのソムリエや酒販関係者など約60人。食に関心の強いフランス人がフランスで開く日本酒コンクールとして、開催2年目ながらも注目を集めている。

Kura Masterの対象は、日本酒のうち、コメと水だけを原料に発酵させてアルコールを造る「純米」系。日本酒は純米系統と、コメでない穀物などが由来のアルコールを添加する「アル添」系の2系統に大きく分かれるが、純米系のみを取り上げている。特定名称酒の分類基準によると、原料のコメをあまり削っていないと「純米酒」、40%以上を削る(精米歩合は60%以下)ものは「純米吟醸」、50%以上を削る(精米歩合は50%以下)だと「純米大吟醸」となる。

一般的にコメを削るほど、醸造すると透き通った味になるとされる。このため日本酒業界でコメを削ることは「磨く」と表現し、味の評価では重視されてきた。たとえば日本国内で伝統のある「全国新酒鑑評会」だと、約850本の出品のうち200本超が金賞を取る。この金賞受賞数の99%はコメを5割以上、削ってある。

「コメは磨けば磨くほど、美味(おい)しく高級な酒」という日本酒イメージを覆すパリでの結果は新鮮だった。「ちえびじん 純米酒」はむしろコメの多くの成分を生かした酒だ。口に含むと豊かなうま味が広がり、のどごしはやや辛口でキレもある。醸造する中野酒造(大分県杵築市)の中野淳之社長は「和食だけでなく洋食や中華にも合う酸味とうま味のバランスを目指した」と語る。コメは大分県杵築産の「山田錦」をこうじ米として35%だけ磨き(精米歩合は65%)、掛け米は福岡産の「夢一献」を30%だけ磨いた(同70%)。「開栓して数日たっても風味が落ちないのも長所」(中野社長)という。

今回のKura Masterでは、審査員賞をとった「七本鎗 純米 渡船」も話題になった。造っているのは滋賀県長浜市の冨田酒造だ。酒米は「滋賀渡船6号」という珍しい品種で、23%しか削っていない。深いコクがあり、飲んだあとの余韻も長続きする。同様に審査員賞には「山田錦 雑賀 純米大吟醸」も入った。「吟醸だから」「大吟醸だから」という理由でなく、味の複雑さや余韻が評価されたという。

Kura Masterの運営に携わる浅岡枝里さんは「フランスでの評価は、日本酒の味わいに再び多様性をもたらしてくれるのでは」と期待する。日本酒づくりでコメを削る競争となったのは、戦後しばらくたってからだ。すっきりした味も魅力的だが、日本酒の「評価軸は複数あっても良いのではないか」と再認識させられる結果になったという。

コメの持ち味生かす

酒販店、いまでや(千葉市)の小倉秀一社長は「素晴らしい大吟醸はもちろん数多いが、良い酒米だからあまり磨かないという選択肢もある」という。たとえば木戸泉酒造(千葉県いすみ市)の「afs(アフス)」という銘柄は、地元産「総の舞」という酒米を35%だけ削ってある。コメで造りながら、果実酒のようなフル―ティさと爽やかな酸味が特徴的だ。

仁井田本家(福島県郡山市)の「にいだしぜんしゅ」は、有機栽培した「夢の香」というコメを30%だけ削っている。秋田市の新政酒造は限定生産ながら「純米酒96%」という、4%しかコメを削らない銘柄も造っている。ふだん食事で食べるコメは玄米から10%前後を削るので、より玄米に近い原料といえる。「あきた酒こまち」という、秋田県が山田錦に対抗して育成したコメを極力生かす試みだ。

「東光」で知られる小嶋総本店(山形県米沢市)は、4月から新たなブランド「小嶋屋」を打ち出した。このシリーズの「無題―壱」という銘柄は、特定名称の分類に当てはまらない酒だ。純米大吟醸を何度も仕込み直すという独特の製法で、甘酸っぱさと奥行きのある味わいにした。歴史書「古事記」に出てくる酒から着想を得たという。スサノオが大蛇のヤマタノオロチを退治するとき、酔わせようと用意させた八塩折(やしおり)の酒だ。同社の小嶋健市郎社長は「最近の日本酒市場は精米歩合のアピールに頼りすぎてきた」と語る。

広がる日本酒の楽しみ方

もちろん、コメを削ってこうじ菌をうまく繁殖させたり発酵させたりするためには技術力がいる。大吟醸クラスだとすっきりした味になって飲みやすく「吟醸香」という優雅な香りもある。フレッシュでジューシーなお酒は美味しい。ただ「精米歩合40%以下に磨くと徐々に似通った味になってしまうのも否めない」と東京・恵比寿の日本酒バー、ジェムバイモト店主の千葉麻里絵さんは話す。コメを削るのは「雑味」を生むアミノ酸類を取り除くためだが、酒米ごとの個性を生かしづらい側面もある。

かつて日本酒でもワインのように熟成させて飲む楽しみ方が珍しくなかった。酒は熟成していくとアミノ酸と糖分がメイラード反応を起こし、あめ色に変わりつつ様々な香りがするようになる。5~10年ほど寝かせた古酒は深みがあるが、税制の影響のほか、どれぐらいコメを削るかという一辺倒の競争が強まっていくとともに熟成酒の文化は薄れていったという。

大吟醸酒や吟醸酒はワイン、ウイスキーに比べ「栓を開けたら早く飲みきらないと風味が変わってしまうのが玉にきず」(都内のソムリエ)との声もある。一方、あまりおコメを磨かないで醸した低精白の純米酒や熟成酒は、開栓から数日たっても楽しみやすい。消費者は「精米歩合が高いから」ではなく、銘柄選びには様々な観点があることを知れば、好みの日本酒に巡り合えたり、味わいも一層深まったりして日本酒の楽しみが広がりそうだ。

(商品部 小太刀久雄)

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