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小谷実可子さん 20歳で悟ったストレス回避の思考法

元シンクロ五輪メダリストに聞く(下)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

1988年のソウル五輪のシンクロナイズドスイミング(2018年4月からアーティスティックスイミングに競技名が変更)でソロ、デュエットともに銅メダルを獲得し、日本のシンクロ界を世界のトップレベルに押し上げた小谷実可子さん。50代の今も、シンクロナイズドスイミングのショーの演出をしながら自身も出演し、年齢を感じさせない演技で観客を魅了する。そんな彼女の心身ともに若々しくいられる秘訣は、「ストレスを生まない」こと。20歳のときの経験が、ストレスを生まない思考法へとつながったという。

苦しさを乗り越えた先には倍の喜びがある

前回の「小谷実可子さん 翌日に疲れを残さない5分ストレッチ」で、私はストレスというものがどんなものかよく分からないという話をしました。それは、ストレスを生まないような考え方が癖になっているからだと思います。小学生のときにシンクロを始め、12歳のときに日本代表に選ばれ、カナダ年齢別選手権大会でソロ、デュエットとも3位に入賞しました。そして、高校1年生のときに米国のノースゲート・ハイスクールにシンクロ留学し、米ナショナルチームを指導したゲイル・エメリー氏の指導を受けました。

帰国後も周囲からの期待は大きく、「日本のチャンピオンにすぐなれる」と、日本一の選手になることを当たり前のように言われ続けていました。しかし、なかなか全日本選手権で優勝することができず、周囲からのプレッシャーとも闘いながら我慢強く努力する日々が続き、20歳のときにやっとソロで全日本チャンピオンになることができました。

優勝したとき、涙が出るほどうれしかったです。うまくいかないことがたくさんあってそれを乗り越えられたからこそ、心の底からうれしいと思えたし、私自身、心身ともに成長できたとも思いました。すぐに全日本チャンピオンになっていたら、あそこまでうれしいとは思わなかったでしょう。だから、神様は私を遠回りさせたんだなとも思いました。

「起こることには、必ず意味がある」。そのときの経験からそう悟った私は、その後、どんなにつらいことや、嫌なことがあっても、さほど落ち込んだり不安になったりすることなく、乗り越えるための対策や進み方を前向きに考えるようになりました。その素早い思考の切り替えが、ストレスを生みにくい体質になったのだと思います。

あと、10代のときに読んだ『サザエさん』の4コマ漫画に共感したこともあって…。ある日、マスオさんが雨が降っている空を見て「ああ、嫌だな、寒いな、ジメジメするなあ」などと言うんです。すると、サザエさんがすかさず、「雨が降ったおかげで、新しく買った傘が使えてうれしいと思えば、楽しいでしょ?」と返します。「ああ、考え方一つで、毎日が楽しいものに変わるんだな。私もそんな考え方をしよう」と、このサザエさんのセリフが胸に刺さったことを今でも覚えています。

全日本チャンピオンになってから、その後のソウル五輪に向けても、つらいことやうまくいかないことはたくさんありました。でも、「きっとこれは何か意味がある!」「この後には、倍の喜びが待っている!」と常に前向きに考えたおかげで踏ん張ることができ、ソロとデュエットの銅メダル獲得につながったのだと思います。

自分の存在価値を見つける方法

ただ、その後も決して順風満帆な競技人生とはいえませんでした。選手人生最後の五輪となったバルセロナでは代表に選ばれたものの、結局出番がなく、五輪の舞台に立つことができませんでした。選手としての最後のキャリアが、補欠。「日本のシンクロ界はあなたを必要としていません。あなたはもういらないんですよ」と言われたような気がしました。

人生のすべてをかけてきた競技なのに、そこにはもう自分の居場所がない…。五輪後、引退を表明した私は、心にぽっかりと穴が開いたかのようで、「これから何のために生きればいいのだろう」と、生きる希望を見失いました。このときに味わった挫折はとてもつらかったですし、さすがの私でもなかなか気持ちを切り替えることはできませんでした。

そんなとき、私はふとバハマに行ってみようと思いました。実は、「ソウル五輪の私の演技を見てピンときた」という見知らぬ人からずっと誘われていたんです。「バハマのイルカを見にこないか」って。最初は、何だか怪しいし、イルカにもまったく興味がなかったのでお断りしていました。しかし、あまりに熱心なので、気分転換も兼ねてバハマに飛んでみることにしました。

毎日、見渡す限りの大海原に身を委ねながら、ずーっとぷかぷかと浮きながら野生のイルカが現れるのを待ちました。10日ぐらいたってやっと、三角定規みたいなイルカのヒレが現れ、うれしくなった私はフィンを履いて海に飛び込みました。

最初、イルカはすぐにどこかに行ってしまい、長く一緒に泳げなかったのですが、私が「遊ぼう」と言うようにグルグル回っていたら、イルカが丸い目でじっとこっちを見て一緒にグルグル回りながら泳ぎ始めました。それがとてもかわいくて楽しくて…。人間ではなく、もちろん言葉も交わせないですが、「同じ生命体」というレベルでどこか気持ちが通じ合うような不思議な感覚に陥りました。

すると、「私はシンクロの五輪メダリストだ」「日本人の小谷実可子という女性だ」といった、まとっていた鎧(よろい)のようなものが一つひとつ剥がれていくような感じがしました。「人生のすべてであるシンクロ」「世の中で最も努力した人がたどり着ける五輪」といった考えもすっ飛んで、「なんだ、地球規模で考えると、私はイルカと同じただの一生命体じゃないか」と、生まれたての赤ん坊に戻ったような気がしました。

自分を生んでくれた両親に感謝し、生かされていることに感謝し、生きているから誰かの役に立ちたいとも思いました。そして、私は何ができるんだろうと考えたときに、やっぱりシンクロだと。シンクロを通じて、人々がやりがいや喜びを感じられるような場をつくりたいと思ったんです。

こう思えるまで時間はかかりました。でも遠回りしても気持ちを整理して、シンクロに心から携わりたいと思えたことが、原動力となって今の仕事につながっています。

バルセロナ五輪で補欠に終わったことは、やはり私にとって未来の仕事に続いた意味のあることであり、苦しんで悩んだ時間も自分にとって必要な時間でした。ささいなことですが、シンクロを頑張っている娘が補欠になってしまったときに、「分かるよ! その気持ち」と声をかけてあげられたんですよね。それも自分が補欠を経験したからこそです。

シンクロを学ぶ生徒から教わったこと

現在、立教大学では授業で大学生に、スクールやスポーツクラブでは子どもたちや40~60代の女性たちにシンクロを教えています。子どもたちも大学生もおばさまたちも、レッスンの最後は団体演技の発表会を行います。最初は脚が上がらなかった50代の女性も、レッスンを続けるうちにピョンと上がるようになって、その自己成長や達成感に「上がったー!」と素直に大喜びされています。発表会はどの年代も真剣そのものです。そうした姿に鳥肌が立ち、またそれが見ている人の胸を打つんですよね。

私はシンクロというスポーツの魅力ややりがいを、多くの人々に伝えているつもりでしたが、逆に、自己成長による湧き出る喜びや笑顔が、こんなに人を生き生きさせるのだと、あらゆる年代の生徒さんたちから教わりました。それがまた、私が日々を生きる糧となり、活力になっています。

(ライター 高島三幸、カメラマン 鈴木愛子、ヘアメイク 住本由香)

小谷実可子さん
 1966年東京都生まれ。幼少の頃からシンクロナイズドスイミングの才能を開花させ、高校のときに単身米国にシンクロで留学。88年のソウル五輪でソロ・デュエットともに銅メダルを獲得。休養中に長野五輪招致に携わる。92年のバルセロナ五輪日本代表になるが、出場の機会を得ず引退。現在はスポーツコメンテーターや、「東京2020オリンピック・パラリンピック招致アンバサダー」を務めるなど国際的に活動する一方、指導者として、スポーツクラブや大学などでシンクロの魅力を伝える。

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