破格の転職オファーでも…「入社NG企業」5つの兆候経営者JP社長 井上和幸

 全体観に欠ける企業や組織であったり、経営と現場、部門間で、対立構造が根深くあったりする可能性が高いでしょう。今後の事業展開は大丈夫かと不安になります。自分の担当業務だけ粛々とこなすタイプの方や、派閥抗争に巻き込まれてもよい方なら、問題はないのかもしれませんが。

●兆候4 株主企業とすり合わせがされていない

 40~50歳代の皆さんの中には、投資ファンドから投資先企業へ、ホールディングス企業などからグループ子会社への出向が前提といった案件で転職話が進んでいる方もいることと思います。このケースで注意すべき兆候が「ファンド側・親会社とは誰とも会っていない」や、「ファンド側・親会社とだけしか会っていない」です。

投資先企業や関連会社への出向が前提の場合は思わぬ立場でスタートすることも。写真はイメージ=PIXTA

 特に目立つのは、ファンド側・親会社が、投資先企業・子会社に対して危機感や不満を持っていて、強権発動で幹部を送り込もうとするターンアラウンド(再生)案件です。この場合、投資元や親会社の考えと投資先企業・子会社の考えが全くすり合わされていないことがよくあります。ひどいケースでは、その重要なコミュニケーション自体を、入社する人に任せよう、期待しているという、「丸投げ」の仕立てになっていたことも。特にポジションがCFO(最高財務責任者)や経営企画などの場合は注意してください。

 必ずしも、全くあり得ないひどい話だというわけではないのですが、入社してみると、現場で誰もあなたの入社を知らなかったとか、白い目で見られたり、のけ者扱いからスタートしなければならなかったりという初動の状況は覚悟しておく必要があります。やはり入社前に状況の確認は怠らないようにしたいものです。

●兆候5 意思決定を必要以上にあおられる

 最後に、「意思決定の段階で、妙に回答を急がされる。肩書やオファー年収などの外見要件で推してくる」を挙げておきましょう。

 先に挙げた「一事が万事」ということで、オファー提示に対しての意思決定のスピードは、私自身は非常に重要なものだと考えています。要は、転職における決断力もまた、平素の仕事における決断力と同期するものだからです。

 とはいうものの、企業側が先に意思決定をあおる場合には、いったん一時停止ボタンを押して、状況確認が必要だと考えます。企業側があおる理由が、着任する予定の職務や部門の状況に応じたもの(いつまでにプロジェクト入りしてほしい、ちょうど新組織になるため、など)であれば合点はいきますから問題ありません。

 一方、そうした理由が特に見当たらず、回答期限が非常に近く設定されるとか、好条件の年収やポジションであおってくるようなケースは、採用側が職務内容そのものや将来性に自信がない場合がほとんどです。本質的な職務のフィットは大丈夫か、再度チェックした上で熟考しましょう。

 転職市場の活況は、「より望ましい職務を得る機会の増加」という点で非常に良いことです。ところがそんな良好な環境が逆に、「まさかこんなはずではなかった」という転職を増やしているのは、ちょっと皮肉なことですね。皆さまには、このタイミングだからこそ、「転職先の決定は、慎重に」の姿勢で臨んでいただきたいと思います。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は9月7日の予定です。この連載は3人が交代で執筆します。

井上和幸
経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。
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