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インドに残る違法な児童婚 貧困が招く悪習の連鎖

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/8/29

ナショナルジオグラフィック日本版

自分の結婚式で、たき火の周りを歩くムスカーン(仮名)。14歳のムスカーンは、父親に命じられて結婚後に学校を退学した(PHOTOGRAPH BY SAUMYA KHANDELWAL)

インドには、児童婚の風習が残る地域がある。結婚とは何かを理解するにはあまりにも幼すぎる少女たち。ニューデリーを拠点に活動する、ロイター通信社の写真家サウミャ・カーンデルワル氏が、少女たちに話を聞いた。

カーンデルワル氏は、タージ・マハルのあるウッタル・プラデーシュ州の州都ラクナウで生まれた。子どもの頃、インドに児童婚の風習があることは知っていたが、実際にそれを経験したという人は、周囲にはいなかった。だが、ラクナウから約200キロしか離れていないシュラーバスティーでは、8歳の幼い少女たちが、家族の意思で結婚させられている。ここはネパールとの国境沿いにある貧しい地区で、同じ州内とはいえラクナウとはまるで世界が違う。

2015年、カーンデルワル氏は小さな花嫁たちの写真を撮るため、ニューデリーとウッタル・プラデーシュ州を行き来するようになった。「もしシュラーバスティーに生まれていたら、私もこの少女たちのひとりになっていたかもしれません」と語る。

法的には、インドで児童婚は認められていない。1929年に、この風習を違法とする法律が定められ、2006年に改正された。現在のインドでは、女性は18歳以上、男性は21歳以上でなければ法律的に結婚できない。これに違反して、結婚させたり、結婚を許可したりした親や年上の配偶者は、最高2年の懲役刑に処せられる。

この10年間で児童婚の数はかなり減少したが、今でもインドは児童婚の数が世界一多い。児童婚撲滅に取り組む団体「ガールズ・ノット・ブライズ」によれば、インドの女の子の4分の1以上が、18歳になる前に結婚しているという。

■貧困が選択肢を奪う

カーンデルワル氏は、児童婚をした少女たちの写真を撮ろうと決めた当初、娘を嫁に出そうという家族の背景には、伝統や家父長制度があるのだろうと考えていた。しかし取材を始めてみると、それ以外にも、貧困、教育の欠如、そして不安定な生活が大きく関係していることに気づかされた。

シュラーバスティーで、ある幼い花嫁の母親にインタビューをしたときのことである。この母親自身も、幼くして結婚した。なぜ自分の娘にも同じ運命を負わせるのかと尋ねると、できればそんなことはしたくないけれど、他に選択肢がないのだという答えが返ってきた。彼女の夫は日雇い労働者で、彼女と子どもたちは、たきぎを集めて売りながら、その日暮らしの生活を送る。何か不可抗力の出来事が起こる前に、娘たちを嫁に出した方がいいのだという。「もし明日洪水にでも見舞われて家を失えば、娘を結婚させるときに必要な持参金を出してやることができません」

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