満タンと空っぽはNG バッテリー長持ちの基礎知識
ノートパソコン、スマートフォン(スマホ)、タブレット、携帯ゲーム機など、身の回りにはバッテリーを搭載する機器があふれている。しかし、バッテリーの充電がうまくいかなかったり、いざ使おうと思ったら残量が極端にすくなかったり、なんて経験は誰でもあるだろう。その原因の一つがバッテリーの劣化だ。
以前はユーザーがバッテリーを交換できたが、最近のスマホやノートパソコンは本体から取り外せないようになっていることが多い。バッテリー交換はメーカー修理扱いになる。そのためノートパソコンやスマホを少しでも快適に使い続けるには日ごろのケアが肝心だ。そこでバッテリーの劣化を抑え、できるだけ長く使えるようにする基礎知識を解説する。
バッテリーが劣化してしまう理由とは?
基本的に、バッテリーは消耗品だ。充放電を繰り返すうちに、給電能力は次第に衰え、容量もどんどん落ちていく。いずれもバッテリーの劣化に伴う症状だ。
最も一般的なリチウムイオンバッテリーの場合、劣化を促す要因が2つある。それは「サイクル劣化」と「保存劣化」だ。
サイクル劣化は、充放電を繰り返すことで生じる化学変化によって引き起こされる。特に、リチウムイオンバッテリーは充電容量が定格の半分程度になると、以降は急激に劣化が進む。そのため、バッテリーメーカーなどは、定格容量の50%に至る充電回数を寿命とし、おおよそ800回前後を見込む。
一方の保存劣化は、放置した状態で劣化する現象のこと。バッテリーを高温にさらすと化学変化が活発になり劣化しやすくなる。ノートパソコンをベッドに置いて放熱しづらくしたり、日差しの強い車のダッシュボードに放置したりは厳禁だ。
満充電が長く続く状態もリチウムイオンバッテリーにとって厳しい。バッテリー内部で高電圧が維持され、化学変化が促されるからだ。
一方で、完全に放電(0%)した状態のままにすることも問題がある。
完全に放電(0%)した状態のままにすると、それ以上の放電を防ぐために、リチウムイオンバッテリーの保護回路が働き、充電できなくなる場合もあるのだ。
リチウムイオンバッテリーを長持ちさせるには、高温環境を避け、ある程度の電力量を維持することが重要になる。
バッテリーを長持ちさせる使い方とは?
リチウムイオンバッテリーの劣化対策の一つは、充電回数を抑えることだ。
とはいえ、こまめに充電を繰り返す「継ぎ足し充電」に、それほど神経質になる必要はない。充電回数は、継ぎ足した数ではなく、充電量が合計で100%に達した時点で1回と数えるからだ。
バッテリーの寿命を考えた場合、最も現実的な対策は、充電容量を一定範囲内に収めることにある。一般に、定格の40%から85%程度が望ましいとされる。一部のノートパソコンは、充電と放電の開始タイミングを設定できる専用のユーティリティーを搭載する。可能ならば積極的に活用しよう。
一方、こうしたソフトのないパソコンの場合、必然的にACアダプターをつなぎっ放しになる。満充電の状態が長く維持されるのは可能な限り避けたい。とはいえ、最近のパソコンは、バッテリーの満充電レベルが定格より低く設定されているものが多い。満充電を維持しても、寿命への影響は小さいと考えられる。
リチウムイオンにメモリー効果はない?
リチウムイオンバッテリーが主流になる前に広く利用されたニッケル水素タイプでは、容量を使い切らずに継ぎ足し充電すると、充電を始めた時点を記憶してしまう「メモリー効果」と呼ぶ現象が発生する。電池容量が残っていても、記憶された時点で電圧が下がり使えなくなるというものだ。
リチウムイオンバッテリーでは、同様のメモリー効果は発生しない。ただし、充電を繰り返すと、劣化によりバッテリー内部の制御回路が誤った残量を認識してしまうことがある。パナソニックの「Let's note」シリーズなど一部のノートパソコンは、こうした残量誤差を補正する機能を搭載している。
(日経BP社日経パソコン編集部 中村稔)
[日経パソコン2018年6月25日号の記事を再編集]
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