コンサルティング会社に移ってからも、ここ一番のプレゼンテーションや大事な会議の前など、活用する場面は多いという。頭の中を整理し、平常心を保てるため、本番であわてなくなる。瞑想を続けることで「職業人としてのパフォーマンスは間違いなく上がってきた」と語る。
ビジネスリーダーの必修科目
とはいえ、梅沢氏は社員や顧客に「瞑想した方がよい」と勧めているわけではない。心身のバランスをとるため、自分をリセットする方法を持つ必要はあるが、人それぞれに合うやり方があると考えるからだ。体を動かすことでもいいし、風呂に入ることでもいい。「とにかく、自分なりのリセットの方法を持つ人のほうが、長い目で見た仕事のパフォーマンスは高くなるだろう。キャリアは持久走だから」と説く。
実際、心身のバランスを取ろうと様々な方法を実践する個人や企業は増えている。グーグルやアップルなど米国のIT(情報技術)企業が導入して注目された「マインドフルネス」の手法もその一つだ。仏教の瞑想を起源とし、「今、ここで起きていること」に意識を集中することで、平静な精神状態を保つ。生産性の向上やストレス解消に効果があるとされ、日本でもヤフーなどが社員研修に取り入れている。
また、日本の禅と西洋、とりわけ米西海岸エリアで発展したマインドフルネスとの接点を探ることで、より深く己を律するセルフマネジメントを理解しようという試みも盛んだ。そのひとつが、一般社団法人Zen2.0が昨年9月から禅とゆかりの深い神奈川県鎌倉市(建長寺など)で開いている国際的なイベント「Zen2.0」だ。宗教、スポーツ、アカデミア、ビジネスなど、様々なバックグラウンドを持つ国内外のスピーカーによる、レクチャーや体験型の多様なセッションに多くの参加者が集い、活況を呈している。
梅沢氏は「セルフマネジメントによって心身の健康を保ち、自分の生産性や創造性をコントロールすることは、ビジネスリーダーの必修科目だ」と指摘する。なぜそう思うのか。
第1に、冷静な状況認識と判断力を維持することの重要性だ。ビジネスリーダーは常にストレスにさらされる。ストレスレベルが高まり疲労が蓄積すると、感情的になったり、判断を誤ったりするリスクも高まる。だからこそ、ストレスを自分でコントロールするスキルが不可欠になるわけだ。
第2に、これからの時代、心身の健康が今まで以上に重要な資産となる。人生100年時代は、個人のキャリアの劇的な長期化を意味するからだ。