2018/8/25
キツネや野良猫による捕食、病気などの理由が重なって、オーストラリア本土で絶滅に追い込まれた(Photograph by Natasha Robinson)

19世紀初頭に英国から連れてこられたキツネは、「タスマニア島を除いて、オーストラリア大陸の南半分全域に広がりました」とデクスター氏は説明する。そのためにフサオネズミカンガルー、タヅナツメオワラビー、フクロネコを含む多くの哺乳動物が野生では絶滅に追い込まれた。

デクスター氏は、タスマニアは「フクロネコのような動物たちにとって、ノアの箱舟になった」のだという。

18年3月にブーデリー国立公園に放たれた20匹のフクロネコも、安住できたわけではない。6匹がキツネを含む捕食動物に殺され、4匹が車にひかれるなどして、生き残ったのは4匹だけだ。

アンソニー氏によれば、すべてが生き残らないことは予想できたが、現在のプログラムに変更を加えることも検討しているという。

希望もある。これからブーデリー国立公園で生まれる世代が、人間、車、飼い犬などの危険な存在に対して、より強い警戒心を持つということだとデクスター氏は言う。

そして、次の世代はすでに誕生している。8月に入って、自然に返されたフクロネコのうち3匹のメスが、それぞれ5匹の子を産んだのだ。

オーストラリア本土に放された20匹のフクロネコのうち3匹が、すでに子どもを産んだ。希望の兆しだ(Photograph by Judy Dunlop)

アンソニー氏によれば、フクロネコは「米粒くらい」の大きさの子を、多ければ一度に20匹も産むことができる。しかし母親の乳首は6つしかないため、子どもは母親の袋の中で生活する8週間のうちから、激しい生存競争にさらされる。

ところで、フクロネコを見たら、誰でもたちまち好きになってしまうだろうか? デクスター氏にきいた。

「水玉模様のパジャマを着たフクロネコが、ミーアキャットのように後肢で立ってじっと見つめる姿を見たらイチコロでしょう」

(文 Liz Langley、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年8月8日付]

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