宇宙に「あうんの呼吸」ない 極限で磨いたリーダー力JAXA理事・宇宙飛行士の若田光一氏(上)

「世界最長の宇宙滞在記録を持つロシアのゲナディ・パダルカ船長からは、食事がコミュニケーションのツールになることを教わりました。閉鎖環境ではチーム全員の士気を維持していくことが難しい。宇宙では、ゴルフの打ちっ放しや酒を飲みには行けませんから」

「そこで食事です。みんなが食べる標準食は米国とロシアから供給される。それ以外に宇宙飛行士一人ひとりが『ボーナス食』といって好みの食事を宇宙に持って行けます。私が船長の時は自分が食べたいものではなく、同僚の仲間が喜びそうなものを持って行きました。サバの味噌煮で仲間をねぎらったこともありました」

何をやったかより、誰とやったかが大事

宇宙ステーションでは、和の気持ちを大切にしながらミッションに臨んだ

――日本人初と言われることが多いですが、意識はしませんか。

「仲間を思いやったり、和を大切にしたりする気持ちは、やはり私が日本人だということを意識しているからかもしれません。和を大切にする気持ちは多くの日本人が価値を置いていると同時に、人類として皆が大切にすべきだと感じます。和の気持ちを大切にしながら、ミッションに臨んでいました」

「実は、チームは宇宙にいる6人だけではありません。日本では筑波宇宙センターに管制局があります。米国ではテキサス州ヒューストンやアラバマ州ハンツビル、ロシアではモスクワ、欧州ではドイツのミュンヘン、カナダはモントリオール。世界各国の管制局とのチームワークづくりも船長に要求されます」

「この前、昔の同僚でNASAを退官する方から別れのあいさつがメールで届きました。そこには『我々は重要な仕事をしているが、何をやったかという以上に、誰とそれをしたかが重要だ』とありました。私もいつもそう思ってやってきました。チーム全員の士気を維持できれば、成果を最大化できるのです」

――4月からはJAXAの理事も務めています。

「就任は突然のことでした。理事になっても、宇宙に人類の活動領域を広げるという究極の目標は変わりません。どのポジションにいても、自分ができることをやっていきます。宇宙飛行士でも理事でも、1人でできることは少ない。JAXAがチームとして最大限のパフォーマンスを出せるような方向に持って行くのが仕事の一つになります」

「それに、まだ飛びますからね。米国やロシアには60歳を過ぎて宇宙へ行く飛行士が結構います。JAXAの宇宙飛行士の定年は60歳。理事の仕事をしながら、次の宇宙飛行を目指して体力を維持していこうと思っています」

若田光一
1989年、九州大学大学院工学研究科修士課程修了、日本航空入社。92年、宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構=JAXA)の宇宙飛行士候補に選抜。96年、米スペースシャトルで初飛行。2009年と13~14年には国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在し、14年に日本人初のISS船長に就いた。18年4月からJAXA理事。

(加藤宏志)

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