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カリスマの直言

保護貿易は自国産業の衰退をもたらす(澤上篤人) さわかみ投信会長

日経マネー

2018/8/27

写真はイメージ=123RF
日経マネー

澤上篤人(以下、澤上) トランプ米大統領が次々と打ち出している保護貿易政策は、どこまで本気なのだろうか。今秋の中間選挙を意識しての一時的なもので終わればいいが、そのまま続けたらそれこそ大変なことになる。保護貿易政策がどんなふうに大変な事態を招くのかを、草刈と話し合ってみよう。

■米国経済にとってもマイナス

澤上 世界経済は自由貿易を旗頭にして拡大発展してきた。その恩恵は、ほとんど全ての資源を自国内で賄え、世界最大の消費市場を抱える、いわば世界一恵まれた国である米国民にも及んでいる。

また自由貿易の進展が、グローバルベースで産業の適地配分を推進してきた。米国においても、国際競争力で劣った家電などの産業が衰退した一方で、IT産業や宇宙航空分野で世界をリードすることになった。

草刈貴弘(以下、草刈) 米国が自由貿易の守護者であり、民主主義の要として世界をリードしてきたからこそ米国は偉大な国であったはず。加えて米国の消費を支えるには相当な量を貿易しなければ賄えないのだから、結果的に苦しくなるのは米国自身となる気がするのですが……。

澤上篤人氏(撮影:大沼正彦)

澤上 ところがトランプ大統領は、米国の雇用を守るという選挙スローガンで、衰退産業を力任せで保護しようとしている。それは、自由貿易をベースとしている世界経済の歯車を狂わせ、各国経済に大きな悪影響をもたらすことになる。いずれは、米国経済にも跳ね返ってくるだけのこと。

歴史的に見ると、1929年10月に発生した大恐慌で、米国は産業保護政策に走った。それが芋づる式に世界恐慌へと広がっていき、ファシズムなど国家主義を生んだ。最終的には第2次世界大戦にまで行ってしまった。

事ほどさように保護主義は世界にも米国にもマイナスである。

■米国の身勝手、自滅への道

草刈 第2次大戦の反省から米国が主導して関税貿易一般協定(GATT)をつくり、世界貿易機関(WTO)へと発展していったはずなのに。

とはいえ、自ら作ってきたルールをぶち壊すのも米国の常。戦後の自由貿易と通貨安定を牽引した「ブレトンウッズ体制」や「スミソニアン協定」の終了は米国のわがままなわけですから、今回のこともいつか来た道となるんでしょうかね。

澤上 確かに米国は自国中心のモンロー主義に走ったり、一転して自由貿易の旗頭に躍り出たりの歴史を繰り返している。それは、いみじくも米国経済の退潮期と拡大発展期とを象徴している。今回の保護貿易も自国優先の身勝手を世界に押し付けつつも、結果として米国の経済力を低下させる愚策となりかねない。

ちなみに、もともとは米国が発案した環太平洋経済連携協定(TPP)の新協定TPP11がまもなく動き出すし、中国の一帯一路もそれなりの成果を上げつつある。どちらも、グローバルベースで交易圏を拡大しようという路線にある。ひとり米国だけが閉鎖経済の道をひた走っていく図式は、まさに自滅の道である。

それは米国製品の国際競争力をそぎ落とすことだけでは終わらない。輸入品に高関税をかけることで、国内物価の押し上げ要因となる。米国内でインフレの火が燃え上がる恐れは多分にある。

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