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和食と融合 美食の国ペルーのニッケイ料理、世界評価

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NIKKEI STYLE

ペルーが美食の国であることは本欄でも何度か触れてきた。太平洋に面した沿岸部、アンデス山脈の高地、アマゾンとまったく異なる3つの気候を擁し、多様な生態系を持つことから「食材の宝庫」と呼ばれている。

旅行業界の専門家や旅行者により選出される「ワールド・トラベル・アワード」でもペルーは6年連続で「世界で最も美食を楽しめる国」部門の最優秀賞を受賞。

1000人以上の食の専門家によって投票される「世界のベストレストラン50」でもペルーは常連だ。今年6月に発表された2018年版ではペルーのレストランが3店ランクイン。その中でも上位10位の中にペルーのレストランが2店も選ばれている。10位以内のほとんどを欧州が占める中、ペルーの存在は際立つ。

2店のうちの一つは「ニッケイ料理」(現地では「comida Nikkei」)の店だ。「ニッケイ」とは「日系」、1899年以降に日本からペルーに移住してきた移民とその子孫のことを指す。そして、彼ら日系移民が地元ペルーの豊富な食材を使いながら祖国の味を守り続けてきたのが「ニッケイ料理」である。

つまり、ペルーの美食ブームを支えているのはペルー料理だけではない。和食をルーツとするニッケイ料理もその一端を担っている。

ユネスコ無形文化遺産に登録されたことをきっかけに、和食は今や世界じゅうで大ブームだ。各国でその国ふうのアレンジがなされたものや間違った和食の解釈がまだ散見されるが、ニッケイ料理はそれとは一線を画する。100年以上の年月をかけて和食文化とペルーの食文化が融合したものであり、ペルーでは一つの食のジャンルとして確立されている。

日系人家庭で作られてきたものが、やがてコメドール(食堂)で供されるようになり、日系人だけでなくペルー人にも人気が広まっていった。そして、ベストレストランにランキングされるような、ガストロノミー(美食学)の領域にまで昇華されているのが他国との大きな違いだ。

その人気はペルーのみならず、中南米、米国や欧州にも飛び火。ペルー以上に日系人が多い米国でも今、ニッケイ料理レストランがブームとなっている。が、ここでいうニッケイ料理は米国料理と和食の融合ではなく、あくまでもペルー料理と和食なのだ。また「世界一予約がとれないレストラン」と言われながらも、2011年に惜しまれつつ閉店したスペインの三つ星レストラン「エル・ブリ」(「エル・ブジ」とも発音)のシェフ、フェラン・アドリア氏が翌年バルセロナでオープンさせたのもニッケイ料理の店。そして、これが「ペルー=美食の国」として知られる大きなキッカケともなった。

さて、先日「世界のベストレストラン50」の7位に選ばれたニッケイ料理店「MAIDO」を訪れる機会があった。このランキングには地域別の「ラテンアメリカのベストレストラン50」なるものもあり、こちらでは堂々の1位。つまり、メキシコ・中南米で最も人気と実力のある店といえる。

客単価は日本円で1万円は超えるレストランではあるが、ジーンズにスニーカーの客もいて、拍子抜けするくらい。

店に入ると、ペルー人スタッフたちから「まいど!」という威勢のいい声がかかる。日系3世でオーナーシェフのミツハル・ツムラ氏はペルーと米国で料理の基礎を学び、大阪で修業を積んだという。

最近の美食レストランではアミューズ・前菜に始まりメイン・デザートといった構成ではなく、小さなポーションで数多くの皿数を提供するスタイルが主流のようである。こちらの店でも「Experiencia Nikkei」(Experienciaは体験の意味)という11皿から構成されるコースがあったので、それをオーダーする。

最もニッケイらしさを感じるのは「セビーチェ」だろうか。セビーチェとは魚介類をレモン果汁や塩、トウガラシでマリネした料理。

もともとペルーでは魚介類をぶつ切りにしていたが、日系人が刺し身のように切ったセビーチェを編み出し、今までにない食感が生まれた。また、日本では刺し身はそのまま食べるため、ニッケイのセビーチェはマリネする時間が短いのが特徴。

最近ではペルー料理のセビーチェもこの影響を受け、魚の切り方も漬け時間もニッケイ式の、よりフレッシュなものが多くなっている。

こちらの店のセビーチェはさらにその進化形といえるもの。「サランダハ」という豆のペーストの上に白身の刺し身が乗ったものとマリネ液が別々に供され、食べる直前にかける。鮮度に自信があるからこそできるワザだ。

このように伝統的なペルー料理のメニューに和食の技法を持ち込んだものもあれば、「銀ダラのみそ焼き」のように、和食のメニューにペルーの食材を組み合わせたものもある。こちらはアマゾンナッツのスライスをソテーしたものが乗っていて、とろけるような白身に香ばしいカリカリ食感がとても合う。

どの皿も目を見張るのはやはりバラエティーに富んだ食材だ。「クイ」という食用モルモットや、見た目はピーマンだが辛みのある「ロコト」、カボチャのような色と食感の果物「ルクマ」など、日本人にとっては使われている食材の半分は見たことも食べたこともないものばかりだろう。

特に驚いたのは、透き通るようなグリーンで小さな球状をした「クシュロ」という食材。科学と食が融合したモダンガストロノミーの世界では人工的に作った、外側が膜に覆われ内側が液体状になったカプセルを料理に使う。そう、「人工イクラ」を作るあの技術である。てっきりそれに違いないと思ったら、これは湖で採れる「藻」だという。

この国では海藻も食べることは知っていたが、まさか藻まで食べるとは!

考えてみれば、日系移民をたくさん受け入れた国はほかにもある。が、「ニッケイ料理」として一大ジャンルを築いた国はほかにない。それはやはり、世界でも珍しい、海藻を食べるとか、セビーチェとして魚を生で食べるというペルーの食文化と和食の親和性が高かったからではないか。また、豊富な食材が創意工夫好きな日本人の創作意欲に火をつけたこともあろう。

昨今、「美食」の概念は大きく様変わりしている。「キャビアだフォアグラだ」と高級食材を遠くからわざわざ取り寄せていた時代から、その土地でとれたものをいただくことこそぜいたくという流れになってきた。そうなると、食材の宝庫・ペルーのアドバンテージは相当高い。

「おおきに!」

「MAIDO」のスタッフの威勢のいい声に見送られ、食の世界においてのこの国の快進撃はしばらく続くのだろうなと思いながら、店を後にした。

(ライター 柏木珠希)

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