留学・寮生活は必須 長野県立大に流れるソニーの志長野県立大学の安藤国威理事長に聞く

英語力をさらに強化するプログラムが、2年生全員に義務付ける海外短期留学だ。3~4週間程度、英レスター大学や米ミズーリ大学コロンビア校、フィリピンのアテネオ大学などへの留学を予定している。留学先では生きた英語を学ぶと同時に、専門分野に関する授業を受け、専門知識も磨く。「どの大学もやっていない」(安藤氏)という自慢の取り組みだ。

大学づくりにソニースピリットを生かす

留学費用は基本的に学生側が負担するが、大学も留学先での事故など様々なリスクを抱えることになる。公立大学だけに慎重論もあったようだが、プログラムの導入を推進した安藤氏は、「鉄は熱いうちに打てという言葉があるように、今の時代、企業に入ってからグローバル人材を目指そうとしても手遅れです。大学時代に海外経験を積み、グローバルなマインドを養っておくことが非常に大切です」と意義を強調する。

長野県立大は、海外留学のしやすさや将来の本格的な留学生受け入れを考え、1学期が約2カ月の4学期制を採用している。

イノベーション支援で地域に貢献

リーダーの育成と並ぶもう一つの柱は、地域のイノベーションへの貢献だ。このために「ソーシャル・イノベーション創出センター(CSI)」を設立した。大学の人的資源や研究の蓄積を生かし、企業や行政などと協力しながら、地域の様々な課題を解決していく考えだ。

「欧米では大学と地域、自治体が一緒になって地域にイノベーションを起こそうという流れが生まれています。また、シリコンバレーでは、教授が学生と組んで次々とベンチャーを立ち上げています。日本でもこれからは大学が地域のイノベーションの核としての役割を果たしていかなければなりません」と安藤氏は強調する。すでに自治体や企業から様々な相談や具体的な課題が寄せられており、課題によっては学生がプロジェクトに加わって進めることもあるという。

地方の大学に共通する課題は、優秀な人材ほど地元に就職せず、東京などの大都市に去ってしまうことだ。「新設大学にとっては有名企業への就職実績を積み上げてブランド力を築くことも大事ですが、県立大学には地元への貢献という責務もあります。学生時代から地域とのつながりを深めて地域に関心を持てば、卒業してからも地域のために働こうという若者が増えるのではないでしょうか」と安藤氏はCSIの役割に期待を込める。

中長期的には、イノベーションの核としての機能を強化するための大学院の設立やグローバル人材の育成に貢献する留学生の本格受け入れも視野に入れる。だが、そのためには、まず優秀な教員の確保が前提という。安藤氏は「企業もそうだが、『組織は人なり』です。大学では教員の質が非常に重要です」と強調する。

安藤氏が胸に刻むソニーの志は、大学運営にどう生きるのか。「ソニーの設立趣意書には、『真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設』という言葉があります。常にイノベーティブな思考を持ち、人のやらないことに挑戦するのがソニースピリットです。今までにないユニークで個性的な大学づくりに取り組む今の仕事は、それが生きる最適の仕事だと思っています」(安藤氏)。1期生が卒業を迎えるのは22年。どんなグローバル人材が巣立っていくのか、目が離せない。

(ライター 猪瀬聖)

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