健康診断の結果などによって保険料が割引される「健康増進型」の保険商品が増えていると聞きました。どんな仕組みなのでしょうか。
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非喫煙者や身長と体重のバランス(BMI)や血圧などで「健康体」と判断された人は、一般に病気で入院したり、死亡したりするリスクが低い。その分、加入時から保険料を割り引く商品は以前からあった。最近登場したのが、毎年の健診結果などによって保険料が変動する商品だ。
住友生命保険が7月に発売した「バイタリティ」は健康診断の結果にとどまらず、腕時計型のウエアラブル端末で日々の歩数や心拍数を測定し、健康増進への「取り組み」も評価して保険料を変動させる。
これは健康増進型保険で実績のある南アフリカの保険会社、ディスカバリーと提携して開発した商品。住友生命は「日本の生保業界にイノベーションを起こしたい」(橋本雅博社長)として、10年間で500万件の契約目標を掲げた。
バイタリティは死亡保険や医療保険に新規加入する人が付けられる特約で、1年目の保険料が特約なしの場合に比べ15%割引になる。特約保険料は無料だが、特典プログラムの利用料金として月864円かかる。
毎年の取り組みと健診結果を4段階で評価し、1年ごとに保険料を見直す。最高の「ゴールド」なら保険料が前年より2%割引、最低の「ブルー」なら同2%割り増しになる。
特典プログラムは多岐にわたる。1週間単位の運動目標を達成すると、大手カフェチェーンの500円券などがもらえるほか、最新ウエアラブル端末や有名ブランドのスポーツ用品の割引購入ができる。
ファイナンシャルプランナー(FP)の鈴木さや子氏は「利用料金の元がすぐに取れる人もいるだろう」とみる。
特典は保険料の割引と併せて日々の健康増進の動機づけにし、保険金の支払いを減らすための仕組み。住友生命の公表資料によると、南アでは「ゴールド」の人の死亡率がバイタリティ以外の保険加入者の約5分の1に下がったというデータがある。
大手生保では明治安田生命保険も来年4月、保険料の一部をキャッシュバック(現金還元)する健康増進型保険を発売する。同社は「保険に行動を縛られたくない顧客が多い」(根岸秋男社長)との判断から、毎年の健康診断の結果だけを評価対象にする。
生活習慣病のビッグデータ分析や高機能ウエアラブル端末の開発などによって、健康増進型保険はさらに広がりそうだ。FPの八ツ井慶子氏は「保険選びの基本は必要な保障をできるだけ安い保険料で得ること。健康増進型でない商品も含め、保障内容と保険料をよく比較検討した方がいい」と助言している。
[日本経済新聞朝刊2018年8月18日付]