パナソニックが採用しているのは、過去に「Firefox OS」と呼ばれていたOSだ。Firefox OSは、ウェブブラウザー「Firefox」を開発するモジラ財団が開発していたOSだが、2016年に同財団が開発から撤退、パナソニックが独自にメンテナンスするOSとなった。そのため、特別なOS名称が設けられることなく、パナソニックのテレビの中でつかわれている。メニューがシンプルで、動作が比較的軽快なのが特徴である。

パナソニックのVIERAシリーズ

LGエレクトロニクスが使っているのは、同社独自の「webOS」である。2009年にスマホ向けに発表された同名のOSを出自とし、その後LGが買収、テレビなどを中心に利用している。テレビへの搭載はAndroid TVよりも古く、機能もかなりこなれており、動作も速い。テレビだけでなくプロジェクターへの搭載例もある。ただ、LGだけが採用するOSであり、日本ではメジャーとは言えないのが難点ともいえる。音声認識やAIへの対応にも積極的だが、欧米・韓国向けの機能が先行しており、日本語への対応はようやく充実しはじめたところだ。

webOSを搭載し、映像配信に対応したLGエレクトロニクスのプロジェクター「PF50KS」

あえて「テレビ録画」に残る東芝

日本でメジャーなテレビメーカーのうち、東芝(現在はハイセンスにテレビ事業を売却したが、テレビ向けのブランドとしては「東芝」「REGZA」が継続される)だけは、AndroidやHTML5などを使ったUIを持つOSではなく、以前からの「組み込み用OS」を使っている。

組み込み用OSの利用を継続しているとはいえ、映像配信が利用できないわけではない。NetflixやDAZNなど、メジャーなサービスには対応しているし、リモコンにはNetflixボタンがある。ただ、Amazon Prime Videoへの対応は遅れているし、Abema TVなどには対応していない。やはり汎用OS系に比べ不利である状況は否めない。

東芝映像ソリューションのタイムシフトマシン対応有機ELテレビ「X920シリーズ」

東芝が組み込みOSを使うことにこだわる理由は、配信よりもテレビ録画を重視しているためである。同社は2009年以来、多チャンネルの番組を自動的に「全録」する「タイムシフトマシン」という機能を多くの機種で採用している。自動的に多数の番組を録画し、それをユーザーの好みに応じて再生すれば満足度が高いのでは――、という発想だ。日本では多くの番組がまず「地上波テレビ放送向け」に作られており、その発想には一理ある。組み込みOS向けに洗練してきたタイムシフトマシンを、汎用OS向けに移植するには時間もかかるし、すぐに同じ満足度のソフトを提供できるとは限らない。だから東芝は、実利をとって「変えない」戦略を採っている、と言える。「テレビ番組が好き」という意思が明確であるなら、これはこれで満足する人も多いだろう。

西田宗千佳
 フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。